吉田 直文|クレインセラミックス|神奈川県大和市

再製を出さない秘訣とは

― 仕事の進め方に、何かこだわりはありますか?
(吉田)ウチのラボは、歯科医院の希望があれば、積極的に立ち会いをしています。患者さんの希望を聞きながら、「できること」と「できないこと」をお伝えし、専門的な知識を持っていない患者さんでも分かるようにディスカッションをしています。患者さんの本音というのは、先生にはなかなか言いにくいところがあるんです。その場合は、そこをうまくドクターにお伝えするのも、歯科技工士として重要な役割だと思っています。

― あとは、当然のことながら、技工物のクオリティですよね。多くのスタッフを雇っているラボはどうしても品質に差が出ます。だからウチは最高でも3人くらいしか技工士は雇わないし、私が責任をもって最終的な品質管理をしているので品質のばらつきは絶対にありません。ウチのラボは、インプラントで有名なドクターの先生との取引が多いのですが、それは品質を高く評価して頂いている証拠なのではないかと、そこは自信を持っています。
 

― 吉田さんは、過去に大変なことって、どんなことがありましたか? 
― 今までの技工士人生で、一番大変だったのは、患者さんが有名タレントさんの写真を100枚くらい持って来られたときですね(笑)「私、こんな歯になりたいの」と仰られるのですが、正直なところタレントさんとは顔も骨格も違うわけで(笑)その時はじっくりと患者さんの話を聞いてあげて、最終的に「このタレントさんじゃなく、あなたの顔に合ったものを作りましょうね」とお伝えさせて頂きました。その患者さんに技工物をセットして表情がパッと明るくなって喜んでくれた瞬間を、今でも思い出す時がありますね。
 
― 技工士として仕事のやりがいを感じるのは、やはり、セットの瞬間ですからね。自分の作った技工物に対する答え合わせの場ですから。過去の立ち会いで蓄積してきた経験や知識の積み重ねが、今の自分を育ててきたと思っています。若い技工士には絶対に負けないくらい沢山の症例数を見てきたからこそ、セットの時だけでなく、セット後の予後まできちんと見通した技工物を作ることができるし、その辺が、ドクターの皆さんから高い評価を頂けている理由の一つかな、と思いますね。


― 吉田さんの技工物は再製が出ないことで有名ですが。
― いやいや、さすがに完全にゼロではありませんよ(笑)でも、「急ぎで作って!」と言われたもの以外は、再製は出ないと思います。数年に一件あるかないかくらいですかね。きちんとドクターとコミュニケーションをとっていれば、ドクターの好みや要求が分かるし、そうやって信頼関係を築いていけば、お互いによりよい仕事ができるようになりますから、自然と再製はなくなりますよね。

大事な場面では、試適で120点を取る!

初めて取引するドクターと、すぐに関係構築は難しくないですか?
― 正直、初めて取引するドクターへの立ち会いは、手探りの部分が多いから緊張しますよ。ドクターがどんな仕事の仕方をするのか、治療のスタンスやコミュニケーションのスタイルも人それぞれですから。でも10~20ケースくらい一緒にやると、そのドクターの考え方が分かってきますので、あとはスムーズに仕事ができるようになります。

― 重要なケースの場合は、やはり試適を重視しています。通常は、模型が届いて、技工物を作って、納品してセット、という流れが普通だとは思いますが、もし確実に120点を取らなければいけないケースは、できるだけ試適を入れてくださいってお願いをしています。高額な自費技工物や複雑で難易度が高いケースの場合は、色とか形を実際の患者さんで事前に確認して欲しいんです。やはり、試適をして頂ければ、技工物のクオリティは何倍もアップしますので。

目先の損得ではなく、長い目でお付き合いをする。

遠方でも、立ち合いをして頂けるのですか?
― はい。実際、かなり遠くまで立会いに行くこともありますよ。もう旅みたいな感じです(笑)毎回毎回、旅をしていたら、仕事的には割には合わないんですが、丁寧な仕事をすることによってドクターからの信頼も厚くなって、仕事を沢山出してもらえるようになりますから、ウチは仕事を目先の損得だけでは考えていません。長い目でみたお付き合いを大切にするようにしています。事前にドクターや医院のスタッフさんに分かりやすく、最高品質の技工物を作るための印象の取り方や写真の撮り方などの情報提供をしているので、もし立ち合いをしなくてもドクターの方々に満足して頂ける技工物をお渡しできると思います。
 

何十年間も維持される技工物を作る

― 最近の若いドクターは、技工士を単なる外注先としてではなく、歯科診療のパートナーという意識を持ってくれるから嬉しいですよね。昔は、「オレが言ってんだからつべこべ言わずに技工物を作ってくれればいいんだ」、とか「技工士風情が、何を生意気なことを言ってんだ」、と仰るドクターもいらっしゃったので(笑)

― そういう意味では、技工士にとって今はすごく良い時代になったと思います。だから尚更、今の若い世代の技工士に頑張ってほしいんですよね。一般的な技工士よりも上のレベルに行くには、やはり知識と経験が必要ですよね。だから色々な患者さんを見て、この患者は5年後10年後にこうなるだろうなっていう予想をして技工物を作らないといけない。

― セットするその瞬間だけでなく、その後何十年間も、高い品質が維持される技工物を作らなきゃいけない。そういうことを考えると、「ただ言われたとおりに技工物を作って、はい終わり」という意識ではなく、ドクターと同じように、その患者さんの一生のために、どのような技工物をつくるべきかという使命感のようなものを持って技工物を作らなければいけないと思うのです。



→ <次ページ>1000万円以上稼ぐ技工士になるために

1 2

3

4

関連記事

  1. 小川 露胤寛|小川製作所|東京都台東区

  2. 片川 絋輔|Sway Dental Lab|神奈川県横浜市

  3. 三輪武人|協和デンタル・ラボラトリー|千葉県松戸市

  4. 島 隆寛|株式会社シケン|徳島県小松島市

  5. 保護中: 坪内 誠|エム・エス・クリエイト|神奈川県横浜市

  6. 熊谷 ちひろ|ケン・デンタリックス|東京都文京区

  7. 日高 洋幸|UNICON|東京都台東区

  8. 関 聖生|京王歯研|群馬県高崎市

  9. 平野周太朗|ケン・デンタリックス|東京都文京区

  10. 滝田 大地|QLデンタルメーカー|神奈川県川崎市

  11. 青嶋 仁|ペルーラAOSHIMA|東京

  12. 間中 道郎|Dent Craft Studio Mʼs Art