
デンツプライ シロナの最新モデル Primescan 2 を、3Shape TRIOS 5、Medit i900、前モデル CEREC Primescan と徹底比較
この記事では、Dentsply Sirona のフラッグシップで最新のIOSである Primescan 2 を、3Shapeの TRIOS 5、Meditの i900、および 1世代前のCEREC Primescan という3つの IOS と徹底的に比較しました。
この記事の目的は、単なる仕様の比較ではなく詳細かつ公平な比較データ・情報を提供し、みなさんへIOS選定の際の意思決定プロセスに役立つ現実的な洞察を提供することです。
IOS への初めての投資をお考えの場合でも、アップグレードを検討している場合でも、この記事が複雑な口腔内スキャン技術を理解するのに役立つことを願っています。
この記事は3分で閲覧可能。目次はコチラ!
各社の口腔内スキャナーの概要
3Shape TRIOS 5
3Shape の TRIOS 5 は、 人間工学に基づいた設計、高速スキャン機能、包括的な歯科用ソフトウェアツールとの統合で知られるワイヤレス口腔内スキャナーです。発売時期: 2022年9月
重量: 299g
ファイル形式: STL、PLY、DCM
クラウドプラットフォーム: 3Shape Unite
Medit i900
Medit の i900 は、市場で最も軽量な口腔内スキャナーの 1 つであり、優れたスキャン速度と幅広い無料ソフトウェア アプリケーションを組み合わせ、デジタル歯科治療の多様な選択肢となっています。発売時期: 2024年4月
重量: 165g
ファイル形式: STL、PLY、OBJ
クラウドプラットフォーム: Medit Link
CEREC Primescan
Dentsply Sirona の CEREC Primescan は、その高い精度と広いスキャン範囲で知られています。CEREC とのシームレスな統合により、治療当日の歯科ワークフローを実現します。発売時期: 2019年2月
重量: 457g (使い捨てスキャナスリーブ付き) または 524g (金属製スキャナスリーブ付き)
ファイル形式: STL および PLY
クラウドプラットフォーム: クラウドなし。ソフトウェア = CEREC
Primescan 2
Primescan 2 は、Dentsply Sirona の最新の口腔内スキャナーです。クラウドネイティブのスキャン、ワイヤレス設計、DS Core プラットフォームとのシームレスな統合を特徴とし、デジタル歯科ワークフローに革命をもたらす可能性があります。発売時期: 2024年9月
重量: 542g (電池含む)
ファイル形式: STL、PLY、DXD
クラウドプラットフォーム: DS Core
スキャン方法
症例の選択: 各 IOS で同じ患者の症例 (用意した16 個のクラウン) を次々にスキャンしました。これにより、すべてのIOSモデル間で直接比較できるようになりました。
オペレーターの一貫性: オペレーターのばらつきを最小限に抑えるために、すべてのスキャンは、経験豊富なデジタル歯科医師 Ahmad Al-Hassiny によって実行されました。
多面的な分析: メーカー純正ソフトウェアとサードパーティ アプリケーションの両方で、次の点に重点を置いて結果を分析しました。
・ スキャン品質(カラーとモノクロ)
・ ファイルの特性(形式、サイズ、メッシュ密度)
・ 臨床的有用性(マージンの明確さ、全体的な精度)
偏差分析: 口腔内スキャンの精度の「神(ゴールド スタンダード)」として評価されている CEREC Primescan を偏差分析の基準として使用しました。
スキャン結果
メーカー純正ソフトウェアスキャン
すべての口腔内スキャナーには、独自のスキャン ソフトウェアが用意されています。ほとんどのスキャナーは、AI によって可動軟組織、頬、舌などのスキャン アーティファクト(ノイズや乱れ)を自動的に除去できます。
Primescan と Primescan 2 は、TRIOS 5 や Medit i900 ほど軟部組織を無視しないことがわかりました。
Dentsply Sirona社のスキャナーはより多くのアーティファクトを検出するようですが、その領域を再スキャンすれば、検出された軟部組織は削除されます。
スキャナーの純正ソフトウェアを使用して、これらのスキャナーが (テクスチャと呼ばれる) 色をどのようにキャプチャするかをプレビューできます。
カラースキャン
スキャナーは、どれだけ正確に対象の歯や隣接する歯から反射する光を捉えられるかによって、色を捉える方法が少しずつ異なります。ソフトウェアのアルゴリズムも、このデータをどれだけ正確に色に変換できるかによって左右されます。

画像:純正ソフトウェアでプレビューされた 4 つのスキャナーの処理済みカラースキャン
さて、スキャンのテクスチャに関して Primescan 2 と Primescan では、どれほど異なっているでしょうか。
Primescan は常に、シャープな線とエッジがはっきりと定義された超高精細スキャン画像を実現します。
一方Primescan 2 は、より写真のようにリアルなテクスチャになります。 Dentsply Sirona社の他のスキャナーのスキャン カラー (テクスチャ) とはまったく異なります。同社は漫画風の美学から離れたようです。 ただし、DS Core で表示すると、Primescan 2のスキャンは解像度が低く、Primescan で見られるような詳細さが欠けていることがわかります。
TRIOS 5 と i900 はどちらも同様のカラー スキャンを生成しますが、Primescan および Primescan 2 と比較すると、色調がそれほど明るくなく、寒色系に見えます。
マージンはすべてのスキャナーでクリアです。
モノクロスキャン
モノクロスキャンも、純正ソフトウェアで実行してプレビューできます。スキャンをモノクロで見ると、対象物の品質をよりよく把握できます。また、カラーで見たときには気付かないスキャンの問題も確認できるのでお勧めです。

画像:純正ソフトウェアでプレビューされた 4 つのスキャナーの処理済みモノクロスキャン
CEREC Primescan は、最も詳細な咬合形態と明確なマージンラインを示しました。 このレベルの詳細さは、複雑な修復作業に特に役立ちます。
TRIOS 5 と i900 はモノクロで同レベルの詳細さを示し、いずれも臨床的に許容できる結果です。TRIOS 5 では、ディスタルマージンがリトラクションコードと少し混ざっています。
上の画像でわかるように、Primescan 2 にはモノクロスキャン機能がありません。 同社に確認したところ、フラッグシップモデルの IOS はカラースキャンしかできず、カラーとモノクロを切り替えるオプションはないとのことです。興味深い決定です。
その代わり、STL ファイル形式でエクスポートすることでカラー データを失う、すなわちモノクロのものが得られます。
エクスポートされたスキャン画像
すべての口腔内スキャナーはオープンになっており、スキャン画像をエクスポートしてラボに送信することができます。スキャン画像を純正ソフトウェアの外部にエクスポートすることで、個々のスキャナーの組み込みソフトウェアによってカスタマイズされた色や最適化された表面レンダリングなしで、スキャン画像を客観的に表示できます。
任意のサードパーティ製 CAD ソフトウェアを使用して、各スキャンでキャプチャされたデータの量と詳細を調べることができます。今回は、Medit Designを使用しました。

画像:STL 形式でエクスポートされ、Medit Design アプリでプレビューされた4 つのスキャナーのスキャン画像
ファイル形式とサイズ
これらのスキャン画像は通常、 STL、PLY、または OBJ ファイルの3 つの形式でエクスポートされます。STL ファイルはモノクロスキャンとしてエクスポートされますが、OBJ ファイルと PLY ファイルは色 (テクスチャ) を保存します。
すべての口腔内スキャナーが OBJ ファイルと PLY ファイルをエクスポートできるわけではありませんが、STL ファイルは業界のデフォルト設定として広く使用されています。
今回比較しているスキャナーは、次の形式でスキャンをエクスポートできます。
・ Medit i900 – STL、PLY、OBJファイル形式を提供するため、最も汎用性があります。
・ 3Shape TRIOS 5 – STLおよびPLY ファイル形式でカラーおよびモノクロスキャンのオプションを提供
・ CEREC Primescan – STL(DS connect 経由でラボに接続している場合はPLYもエクスポートできます)
・ Dentsply Sirona Primescan 2 – DS Core を介したSTL および PLY 。
各スキャナーには専用のファイル タイプもあります。Meditの場合は.meditmesh、 Dentsply Sirona の場合は.DXD、 3Shape の場合は.DCM です。

メッシュ密度解析
上記の表から、ファイル サイズに各スキャナー間で大きな違いがあることがわかります。高解像度または大型のオブジェクトのエンコードでは、スキャン画像の 2D 表面をカバーするために、より多くのファセット (テッセレーション内の三角形) が必要になります。
ラボでは、exocad などのサードパーティ製 CAD ソフトウェアがよく使用されますが、 今回は Medit Designを使用して、受信した STL、PLY、または OBJ ファイルをプレビューし、各スキャンでキャプチャされたデータの量と詳細を確認しました。

画像:Medit Design アプリでプレビューされた 4 つのスキャナーのメッシュ密度画像
メッシュ密度とファイル サイズの関係を次のようにまとめることができます。
Primescan(最も密度が高い)
Primescan 2
i900
TRIOS 5 (最も密度が低い)
メッシュ密度が高いほど詳細な情報が得られますが、必ずしも精度や臨床結果に直接相関するとは限らないことに注意することが重要です。
マージン分析
このソフトウェアは、マージンも確認することができます。明確なマージンキャプチャは、最終的な修復物の適合に非常に重要です。スキャナーのパフォーマンスは次のとおりです。

左:頬側ビュー、右:口蓋ビュー
Primescan は、すべての領域で最も詳細で目立つマージン ラインを備えているようです。
多数の調査とデータでもこれは裏付けられており、Dentsply Sirona の CEREC Primescan は、口腔内スキャナーのゴールド スタンダードとして広く知られ、 市場で最も正確なスキャナーの 1 つとなっています。ファイル サイズも最大です。
Primescan 2 のマージン ラインもかなりシャープですが、やはり Primescan とは見た目が異なります。 これは、11.4 MB で 2 番目に密度の高い STL ファイル サイズであることと一致しており、前身のモデルの足跡をたどっています。
TRIOS 5 と i900 も、特に歯肉縁上で良好な結果を示しました。歯肉縁下領域では若干の差異が見られましたが、いずれも臨床的に許容できる結果を示しました。
すべてのスキャナーは正常に動作し、この簡単なクラウンスキャンではすぐに使用できました。
偏差分析
今回偏差を見るために、CEREC Primescan を比較する際の基準としました。すべてのスキャナーで偏差は 50 ミクロン以内で、臨床的に許容できる範囲内でした。
クラウンの断面図では、スキャン間の差が最小限であることが示され、すべてのスキャナーで高い一貫性があることが示唆されました。

CEREC Primescanのスキャン画像および断面図と比較したスキャンの偏差マップ
おさらい
i900: Medit のフラッグシップである本スキャナーは、パフォーマンスと人間工学の優れたバランスを実現しています。市場で最も軽量なスキャナーの 1 つです。
Primescan: 高い精度と詳細性を維持し続けています。これは、特に当日歯科治療にとって重要です。
Primescan 2: 印象的なデビューを果たしたクラウド スキャナーです。全機能を使えると、大きな可能性を秘めています。
見通し
ここでは、いくつかの実用的な考慮事項を紹介します。
・ どのスキャナーでも、このタスクを簡単に処理できることがわかりました。すべて高速かつ正確でした。
・ それぞれのスキャナーは確かに「違う」感じがしますし、ソフトウェアの UI もそれぞれ異なります。スキャナーを探している人には、購入する前に試してみることを常にお勧めします。
・ Primescan は、CEREC ミルと組み合わせると、当日歯科治療の明らかな選択肢となります。
・ Primescan 2 は興味深く、テクノロジーの面で確かに画期的です。ただし、インターネットに依存しているため、使用時に多少の遅延が発生します。
・ 私は長年、あらゆる適応症について TRIOS 5 でスキャンしてきました。これは非常に役立ち、基本的に何でも処理できます。これらの単純なクラウン スキャンは非常に簡単に実行できます。
・ Medit i900 は、Medit に期待していた通りの製品です。素晴らしいスキャナーです。ヘッドが大きくなったため、以前の Medit スキャナーよりもスキャンがはるかに簡単になりました。
まとめると、シンプルなクラウンやブリッジの場合、どれも機能します。いずれにしても、それらの違いを見るのは興味深いことです。
今後の展望
AI 統合:
自動マージン検出、リアルタイム治療計画、強化された診断機能など、AI を活用した機能がさらに増えると予想されます。
強化されたソフトウェア統合:
スキャン ソフトウェアとその他のデジタル歯科ツールとの緊密な統合により、スキャンから最終的な修復までのワークフローがよりシームレスになります。
クラウドベースの IOS として DS Core に直接接続するPrimescan 2 は、その一例です。
材料の互換性の拡大:
スキャナーの精度が向上するにつれて、反射率の高い表面を含む、より広範囲の材料をスキャンできるようになることが期待されます。
小型化:
より軽量で人間工学的なスキャナーへのトレンドは今後も続くと予想され、メーカーは性能を維持しながら小型化の限界を押し広げています。
PANDA Smart IOS はその一例で、重量は 138 グラムです。これは SHINING 3D がわずか 124 グラムのAoralscan Elite をリリースするまで、市場で最も軽量で小型のスキャナーでした。
結論
どのスキャナーを選択するかは、具体的な診療ニーズ、予算の制約、および望ましいワークフローに大きく左右されます。
最終的には、これらのスキャナーはいずれも、デジタル歯科ワークフローの強固な基盤として機能します。
重要なのは、具体的なニーズを考慮し、可能であればスキャナーを実際に試し、歯科医院のデジタル統合に関する長期目標について考えることです。
デジタル歯科の世界は常に進化しており、診療と患者にとって最善の決定を下すには、常に情報を入手することが重要です。

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こちらの記事は、institute of Digital Dentistry社の記事をもとに、技工士ドットコムが独自に和訳、加筆等を行ったものとなっております。