この記事では、世界各国が直面する歯科技工士不足の現状とその構造的な原因をレポートします。
深刻化するアメリカの「パイプライン枯渇」
アメリカでは、まず経験豊富なシニア技工士の高齢化と引退が急速に進んでいます。さらに深刻なのは、その減少分を補うべき若者の供給パイプラインが枯渇している点です。歯科技工士養成プログラムへの参加者が減少し、多くのプログラム自体が閉鎖に追い込まれています。この背景には、ヘルスケアやITといった他の業種と比較して職業的な魅力が低下していることや、人手不足が現役技工士の過重労働や燃え尽き症候群を招いているという悪循環も指摘されています。また、急速なデジタル化の進展に対し、高度なCAD/CAMスキルを持つ技工士の育成が追いついていないというスキルのギャップも問題となっています。
政策にも見放されたイギリスの「危機的状況」
イギリスの状況は特に深刻で、「憂慮すべき事態」 を超え、「危機的」と表現できます。歯科技工士の登録者数は断続的に減少を続け、2024年には過去最低の5,025人まで落ち込みました。特に絶望的なのは新規登録者の数で、同年、イギリス全土での新規登録者数はわずか168人に過ぎませんでした。これにより、国内では歯科医師9人に対して技工士が1人という極端な需給の歪みが生じています。さらにイギリス政府は2025年7月、人手不足にもかかわらず移民法を改正し歯科技工士を「熟練労働者ビザ」の対象から除外する、という政策を打ち出しました。これにより、海外からの人材確保という道も閉ざされ、業界は深刻な打撃を受けています。
ドイツでさえも抗えない「高齢化の影」
伝統的なマイスター制度が根付くドイツでさえも、人材不足と無縁ではありません。ドイツの歯科技工士も明確に高齢化しており、例えばマイスター(マスターテクニシャン)の約24%が55歳以上というデータもあります。アメリカと同様に、若者が歯科技工士以外のキャリアを選択する傾向が強まっており、高齢スタッフが引退していく中で、経験豊富な人材の確保がますます困難になっています。このように、歯科技工士不足は、先進国共通の「高齢化」「若者の不足」「職業イメージの低下」という構造的な問題に起因しています。この世界的な課題に対し、各国はどのような対策を講じているのでしょうか。
次回の記事では、その辺りを詳しく見ていきます。
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