令和8年度の診療報酬改定において、歯科技工士の処遇改善(確実な賃上げ)を目的とした「歯科技工所ベースアップ支援料」が新設されました。
この制度は、皆様の労働環境を向上させるための重要な一歩ですが、歯科技工所が自動的に受け取れる ものではありません。本記事では、歯科技工士の皆様がこの制度を正しく活用し、取引先の歯科医院(歯科医療機関)へどのように請求・アプローチすればよいのか、具体的な手順と実務上のポイントを分かりやすく解説します。
1. 大前提:算定するのは「歯科医院」である
まず押さえておくべき最も重要なポイントは、この支援料を直接算定・請求するのは歯科技工所ではなく、「歯科医療機関(歯科医院)」であるということです。 歯科医院が地方厚生局へ施設基準の「届出」を行い、診療報酬として算定した支援料(1装置につき15点)の全額が、歯科技工所への委託費の増額分として還元される仕組みです。※なお、院内ラボ(歯科医院に所属する歯科技工士)による製作は本制度の対象外となります。
つまり、歯科技工所がこの恩恵を受けるためには、「取引先の歯科医院に制度を理解してもらい、届出と算定に協力していただくこと」が不可欠となります。
2. 歯科医院にはどう請求すればいい?【実務のポイント】
歯科医院が支援料の届出を行ってくれた後、実際に納品・請求する際のルールについて解説します。厚労省推奨は「別建て請求」
実際の請求方法としては、従来の「歯科技工料金に含める(内包する)」方法と、支援料を分けて記載する「別建て請求」の2通りが考えられます。 製作技工に要する費用の中に本支援料を含めて、まとめて支払いを行うこと自体は認められています。しかし、同一の補綴物でも料金体系が複雑になり、歯科医院との間で請求時のトラブルにつながる懸念があるため、厚生労働省保険局は「別建て請求」を推奨しています。
【請求書の記載イメージ】
・ 推奨(別建て):レジン前装金属冠 〇〇円 / ベースアップ支援料 136円
・ 非推奨(内包):レジン前装金属冠(ベースアップ支援料含む) △△円
※内包する場合でも、支援料が含まれることが明確に分かる請求書等を作成し、保存しておく必要があります。
消費税の取り扱いに注意!
歯科技工所ベースアップ支援料には、消費税が含まれています。 1装置につき15点(150円)の場合、請求書には「税抜136円・税込150円」となるように記載して請求してください。また、この支援料を、歯科医院から歯科技工所に対する委託費増額に伴う「消費税の増額分」に充当することも認められています。
未来院等の場合の請求は?
製作がすでに行われているにもかかわらず、患者が理由なく来院しなくなったり、治療中止や死亡などによって装着できなかった場合でも、未来院請求時に算定することが可能です。
3. 歯科医院へ協力を依頼する4つのステップ
本制度をスタートさせるためには、歯科技工所側からの積極的なアプローチが鍵を握ります。以下のステップで歯科医院へ協力を依頼しましょう。ステップ1:制度の趣旨を説明し、協力を依頼する
まずは、歯科医師へ制度の目的(技工士の処遇改善と人材確保)を説明し、届出の協力を依頼します。歯科技工関連三団体が作成した「協力のお願い」の文書テンプレート(案内文)が用意されているため、これを活用して納品時などに案内するとスムーズです。
歯科技工所ベースアップ支援料の活用による歯科技工士の処遇改善に関するご協力お願い.pdf
ステップ2:歯科医院の「届出負担」を減らすサポートをする歯科医院が厚生局へ提出する「届出書(エクセル形式)」には、「製作委託等を行う歯科技工所の名称」や「歯科技工所における賃金引き上げの方法」を記載する欄があります。 歯科医院にすべて任せるのではなく、あらかじめ自社の情報(技工所名や賃金引き上げの具体策など)を入力したエクセルデータを歯科医院へメール等で提供し、歯科医院側の入力の手間を最小限に抑えるよう配慮しましょう。
ステップ3:トラブル防止のための「協定書」を取り交わす
制度の運用を円滑にするため、歯科医院と歯科技工所の間で「歯科技工所ベースアップ支援料に関する協定書」を取り交わすことが推奨されています。 これは法的拘束力を持つ契約ではありませんが、以下の内容を相互確認するためのものです。
・ 支援料の還元:算定した支援料は、委託費に反映(還元)すること
・ 消費税の取り扱い:消費税相当額を含んだ金額として取り扱うこと
・ 実績報告への協力:納品書での記載方法の確認や、算定回数の共有に協力すること
歯科医院から求められた場合や、運用ルールを明確にしておきたい場合は、関連団体が用意している協定書のひな型を活用しましょう。
ステップ4:「実績報告」に向けたデータ提供を行う届出を行った歯科医院は、毎年8月に「実績報告書」を提出する義務があります。この報告書には、歯科技工所ごとの算定回数を記載する欄があります。 複雑な集計は不要ですが、可能な範囲で歯科技工所側でも算定回数をカウントしておき、実績報告書の作成時期(毎年夏頃)に歯科医院へデータを提供することで、良好な協力関係を築くことができます。
4. 「GK4クラウド」で面倒な「別建て請求」を自動化!
技工士ドットコムが提供する指示書電子化・事務作業効率化サービス「GK4クラウド」を活用すれば、厚生労働省が推奨する「別建て請求」に対応した納品書や請求書を簡単に作成できます。あらかじめ「歯科技工所ベースアップ支援料」の届出が完了している取引先歯科医院向けの価格表を設定しておくことで、補綴物の注文に合わせて自動的に支援料が計上され、納品書および請求書が作成されます(※一部の補綴物については、作成時に手動での追加が必要となる場合があります)。
これにより、毎月の請求書作成時に1か月分の注文履歴から支援料の算定回数を数え、手作業で計算する手間を大幅に削減できます。
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