変化する時代のニーズに応えるため、組織としての総合力を高め、全国の歯科医師から高い評価を得ている日本を代表するラボ。歯科医院の要望を正しく把握した上で、経験豊富な歯科技工士が技工物を製作。納品前に責任者が最終的な品質確認をしているので、クオリティという面でも圧倒的な安心感がある、という声が多い。

シケン | 徳島県小松島市

全国に技工所7ヶ所、営業所26ヶ所を持つ、国内屈指の規模の歯科技工所、シケン。社長の島 隆寛氏は、高品質な技工物を歯科医院に安定的に提供することと、従業員が一生安心して歯科技工士という職業に携われること、を両立すべく業界でもいち早く「デジタル化」と「働き方改革」に着手。今では、激務になりがちな歯科技工業界にありながら、超低離職率な優良企業の一つとして知られる。大型技工所の強みを生かし、クラウン、デンチャー、インプラント、矯正など、幅広い歯科技工物に対応している

代表インタビュー ラボの基本情報 取扱技工物 求人情報 スタッフの声

代表取締役
島 隆寛(しま たかひろ)

1975年 徳島県小松島市生まれ。早稲田大学法学部卒
1999年 第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行
2001年 株式会社シケンへ入社 取締役就任
2002年 同社 常務取締役就任
2003年 同社 代表取締役社長就任
2003年 株式会社クエスト 代表取締役社長就任
2019年 徳島県中小企業家同友会 代表理事就任

「技工業界のトップリーダーの一人。国際展開も積極的に推進!」

歯科技工の企業化・組織化を進める
― シケンはどのようスタートされた会社なのですか?
シケンは、私の父である先代が歯科技工業界の大塚製薬のようになりたいといって始めた会社なんです。会社が黎明期の頃、大塚製薬の創業者の方に、歯科業界の大塚製薬になりたいんだと直接電話して、言ってみれば弟子のような形で経営について学んでいたこともあったと聞いています。 ― 大塚製薬の創業者に直接・・・すごい行動力ですね(笑)
大塚製薬は地元徳島県の優良企業ですので、先代としてはやはり強い憧れがあったんですね。僕自身は歯科技工士にはならなかったのですが、子供の頃から自分はシケンの後継者になるもんだと自覚して育ちました。先代がせめてお金の計算はできるようにということで、大学卒業後に銀行でしばらく働きまして、その後社長になってもうかれこれ17年になります。 先代が創業したのは1975年ですが、その頃から既に、「歯科技工という仕事は企業化していくべき」だという考えを持っていました。もちろん様々な価値観があると思うのですが、シケンは歯科技工を企業化するということを一つの目標としてやってきています。

私の代になってから「歯科技工業の企業化・組織化」ということを改めて経営理念として言語化したのですが、これはむしろ創業理念といってもいいことなんですね。今は社内の組織化や外注先のネットワーク化まで含めて、10年くらいのビジョンとして考えています。ですので10年後に我々がありたい姿から逆算して、今何をすべきかを検討し、会社として実行している状況です。
2万本のCADCAM冠データを元に論文執筆
― いまでは業界最大手と言っていい規模ですよね。
シケン単体で社員は666人、うち歯科技工士は380人ほどです。業界では和田精密さんに次ぐ規模となっています。歯科材料の子会社のクエスト等も含めますと、グループ全体で社員は1,000人を超えます。 ― 大手ならではの強みもありそうですね。
そうですね。この規模で操業していますと、論文が書けるような大量のデータが入手できるという強みがあります。たとえば、『日本歯技』で最優秀論文賞を取った論文があるのですが、そこではCAD/CAM冠に関して2万本ほど調査・分析しました。なぜCAD/CAM冠かというと、CAD/CAM冠は金属よりたわんで取れてしまうのではないか、噛み砕いてしまうのではないか、など様々な懸念があったんですね。

しかし、我々が2万本くらい調べたところ、問題はほとんどないということが分かりました。今は、大臼歯は金属アレルギーがある場合とか、7番があって下の6番に限るとか色々な制限がありますが、我々のデータからすれば大臼歯も意外と外れないのです。シケンのデータと他社のものを合わせるとはっきりするんですね。これは数があるからこそ分かることです。 ― 論文にできるほどの大量のデータがあるのはすごいですね。
全国展開を始めた頃は、「早くて安くて、品質はイマイチなシケン」というイメージを持たれていたと思います。でも今では、先ほどお話しした論文もそうですし、コンペで賞を取る社員も出てきましたし、そういった社員の存在が確実に会社全体の技工物の質を上げていると自信を持っています。スタディー・グループや学会への参加も積極的に進めていまして、社員の意識も徐々に変わってきていると思います。  
機械化・デジタル化に全力で対応する
先代が、吉祥寺で面白いことをやっていた時期があるんですよ。2階が歯科医院で、1階がメガネショップならぬ、「入れ歯ショップ」というショールームのようなものをやりました。珍しいし、何屋さんか分からないから、お年寄りの方がどんどん見に来るわけですよ。 お客さんの中には「私こんなの入れてるのよ」と入れ歯を外して見せる人がいたりしてね。蕎麦屋の実演みたいに、歯科技工士の作業が見えて、マイクもついていて技工士に話しかけることもできる。ある方には「これは歯科技工士の夢だ」なんて褒めていただいたりもしました。 ― それはすごい。かなり画期的ですね(笑)
ただ、非常に家賃の高い立地だったので、最終的には撤退することになったんですが、そういう入れ歯の店を巣鴨あたりでやってみたいなぁという気持ちは今もあります。でもまずは今は、デジタル化に全力で対応しないと他のラボに負けてしまう時代なんです。もしチェアサイドでのミリングが実際に定着したら歯科技工の会社は今の2~3割に減ってしまうかもしれません。今は、そういう激動の時代なので、残念ながら今は昔のように楽しいことをやっている余裕はないんですね。 ― シケンさんでは、デジタル化・機械化にかなり力を入れていますよね。
はい。技工の機械化はシケンではかなり進んできたと思います。口腔内スキャナーの発展と、ジルコニアの素材の進化と、細かいところを削るミリング・マシーンの能力がだいぶ上がった。以前のものは真上からまっすぐしか削れなかったですが、今のものは斜め彫りができる。10年前にはこんなの無理だろうと言われていたことが、今では当たり前のように普通にできる。FMCクラウンも、だいたい7割はワクシーという機械で作っています。今では精度は人間技を越えつつあると思います。 ― あらゆる技工で、デジタル化を?
ただ、難しいのは依然としてデンチャーです。機械化できる部分が少ない上に、作り手が圧倒的に不足している。我々が値上げを実施し、納期を延長しても、受注が全然減らないのでめちゃくちゃ忙しい。技工料が今の2倍になり納期も3倍になる、くらいのところでやらないとやっていけない。ただ、昔の時代に比べると歯が残るようになってきているので、デンチャーの数自体は少しずつ減ってきているんですよ。

つまり忙しい原因は、単に作り手不足なだけなんです。そこを変えるにはやはり制度自体が変わらないといけないんですが、一緒に声を上げて頂けるドクターがなかなかいないのが現実です。
シケンが強靭な企業体質を築けた、3つの理由
― シケンさんは、かなり独自路線を行っている印象がありますが。
そうですね。シケンが異色なのは、歯科材料の工場を持つメーカーでもあること、国際展開を積極的に進めているところですね。フィリピンのセブ島に歯科材料の製造工場、マニラに歯科技工所があります。また、ロサンゼルスにも事務所がありまして、歯科材料の営業拠点になっています。子会社のクエストは先代が23年ほど前に買った会社でして、当時からフィリピンに工場を持って操業していたんですね。人工歯だったり、PMMAのディスクだったり、技工士が使うような様々な材料を作っています。ラーメン屋が製麺業もやるようなもんです。 我々も含めて技工所のメーカー化が進んできていると思います。逆に、メーカーの技工所化は大変ですよ。というのは、残念ながら技工所の方がメーカーより休みが少なく給料も安いですから、メーカーが技工所をやるというのは付加価値の低い方に行くということになります。加えて、メーカーは、ある意味「補綴物のような細やかなやり取り」を、歯医者さんの相手を個別にしたことはないわけです(笑)一方で僕らは、アナログに飛び込み訪問を繰り返してきた歴戦の強者たちですから、言ってみればそこは本業なわけです。 ― なるほど、メーカーが技工所をやるのは合理的でないと。
だから、メーカーさんが特定の材料を売るために技工所をやってもなかなか難しい。技工というのは、こっちにとって都合のいい技工物だけ扱うわけじゃなくて、たとえばインレーなど面倒な作業もやるから、他の仕事もいただけるという面もあります。スーパーで1円で卵を売っているようなもんですね(笑)あれがあるからお客さんが来て、他のものも買っていってくれる。なのでメーカーが技工に参入しておいしいところだけ取ろうとしても、なかなか採算が合わないと思います。 正直、シケンにコスト競争を挑むのは大変だと思いますよ。拠点は田舎にあって、社員もあんまりやめなくて、しかも材料までやっている。コスト勝負しかけるのはちょっと無謀でしょう。そう言えるだけの強い体質をシケンは整えています。 とはいっても、メーカー業だって簡単ではないです。この材料の開発にも数億円ほどかかりました。開発費もそうですが、売上と同じくらいの在庫を準備しなきゃならない。種類も多くて、大きさ・形・色がそれぞれ4種類の合計64種類があります。これだけの種類と在庫を持つというのは結構大変ですよ。だから、ある程度の大きさが自国市場にないとなかなか参入できない。日本は保険制度があって、歯をいくつ並べたらいくらと決まっていますから、逆に現在のように4社寡占になっているところはあると思います。
材料の海外展開には技術指導も必須
― 海外にも材料を販売されているのですか?
はい。ミャンマー、スリランカ、インドネシア、タイなど、アジアを中心に約10ヶ国ほどの販売実績があります。こうした国では、材料を売るだけではなく一緒に医療技術の指導も行っています。テロが起きる前のスリランカには、技工士を直接派遣して技術指導をしていました。シケンが行くだけではなく、海外からの技術研修の受け入れもあります。 ― 海外で技術指導までされているんですね。
技工士教育って他の国ではあまりないんですよ。市場規模が小さいので、50~60年前の日本と一緒で、歯科医師が技工物を作っているんです。当然ながら技工の教科書もない。ただ、彼らは英語が読めるので、英語圏の教科書が使えるんですが。アジア圏は経済発展が著しいわけですが、すぐに歯科市場が大きくなるわけではない。それは、お金を持っている患者だけじゃなくて、腕が良く良識を持った歯科医師と、材料を入れる僕らのようなサプライヤー、入れ歯・差し歯を作る技工士が揃わないと成熟してこないからです。 ― 海外展開でメインとされている国はあるのですか?
それはフィリピンになりますね。フィリピンでは歯科技工所で現地人材を育成しています。これは散髪屋を世界展開するのと、ハサミとシャンプーを売るのとどちらが簡単かみたいな話で。それだと、ハサミとシャンプーを売る方が簡単なんですね。フィリピンの技工所ではデザインの仕事も受けています。アメリカの同業者からデータを受け取ってフィリピンでデザインをして返すというビジネスです。

フィリピン人は英語ができて、地理的にはアメリカの真反対にありますから時差的なメリットがあるんです。このデザインビジネスは始めた時は世界でオンリーワンでしたが、最近は南米に競合が現れていますね。とはいえ、依頼自体も増えていますし、今後のビジネスの一つとして期待しています。
社員の待遇改善を図り、業界全体を変えていきたい
― 最近の日本国内の活動はいかがですか?
最近、熊本に工場を作ったんです。九州展開の予定はもとはなかったんですが、10年ほど前から九州の若者たちの採用が増えてきましたので、そちらにも拠点を作ったという状況です。歯科技工士は採用難ですから、入ってくれる人の多いところに拠点を設けて人材を確保しようという狙いです。色々な取り組みのおかげで、去年は約40人の新卒者を採用できました。その7割が女性ですね。 ― 新卒を40人も!?人材採用難の中、かなり多いですね。
そうですね。シケンの離職率は数%で、業界の標準からすると相当に低いのですが、もっともっと低くしていきたい。そのためにも、特に人に関する取り組みは続けていきたいと思っています。安心して長く働けなければ、この業界は終わってしまいますからね。 ― 今後、シケンはどういったところを目指していくのですか?
野望といいますか、自分として考えていることは、業界のためにも、まずはシケンの社員だけでも待遇をもっともっと良くしていきたいんです。この業界の相場は、休みが年間105日、年収400万円です。せめて週休2日の年収500万にしないといけないと強く思っています。

給料と時間に見合わなくてもいいと考える職人肌の技工士がいることも事実なんですが、そこに照準ラインを合わせたのでは業界ごと沈んでしまいます。そういう状況を防ぐためにも、業界全体を変えられるくらいにもっとわれわれのシェアを伸ばしていかなければならないと思っています。 どうもありがとうございました。
編集後記/高崎
業界第2位の売上規模で、材料メーカーとしても事業を広げ、さらに積極的に海外展開もしているシケン。島社長のお話を聞きし、これからも絶対に伸びる会社だと確信した。採用難の時代にもかかわらず多くの若手を採用でき、業界でも圧倒的に低い離職率を実現できていることは良い会社である証拠でもある。技工物製作の現場も拝見させて頂いたが、製造業として「ここまで高い生産性を実現しているのか」とその業務管理のレベルの高さに驚いた。技工業界という枠組みだけでなく、日本を代表する会社の一つとして、このような志の高い企業が世界に展開していくことが望まれる。

全国に技工所7ヶ所、営業所26ヶ所を持つ、国内屈指の規模の歯科技工所、シケン。社長の島 隆寛氏は、高品質な技工物を歯科医院に安定的に提供することと、従業員が一生安心して歯科技工士という職業に携われること、を両立すべく業界でもいち早く「デジタル化」と「働き方改革」に着手。今では、激務になりがちな歯科技工業界にありながら、超低離職率な優良企業の一つとして知られる。大型技工所の強みを生かし、クラウン、デンチャー、インプラント、矯正など、幅広い歯科技工物に対応している
株式会社シケンの基本情報
株式会社シケン | 徳島県小松島市
〒773-0009 徳島県小松島市芝生町字西居屋敷55-1
<沿革>
1979年 株式会社シケン設立
株式会社シケンへのアクセス

技工物種類 対応可否
保険FMC           〇
自費クラウン/ブリッジ           〇
自費インレー・アンレー           〇
CADCAM冠           〇
チタン冠           〇
インプラント(ストローマン)           〇
インプラント(ノーベル)           〇
インプラント(その他)           〇
デンチャー(保険)           〇
デンチャー(自費)           〇
矯正           〇
マウスピース矯正           〇
マウスガード           〇
自費TEK           〇
ラミネートべニア           〇

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求人項目概要
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株式会社シケン
尾鷲 博記(おわし ひろき)

2008年 横浜歯科技術専門学校卒業
2008年 株式会社シケン 高松技工所勤務
2010年 株式会社シケン 東京技工所勤務
【所属学会】
2013年 日本歯科審美学会入会

自費技工のスペシャリスト。業界の雄・シケンを支える”縁の下の力持ち”。

“医療系でものづくり”の仕事として歯科技工士を選んだ
― 尾鷲さんは、どのような経緯でシケンで働くことに?
小さい頃からものを作るのは好きだったんです。だから、将来の仕事を考えた時に、大工や伝統工芸の職人、時計の技術者など、モノを作る職業に興味を持っていました。歯科技工士という職業自体は資格情報の本で知ったのですが、モノづくりかつ医療系の職業というところに惹かれましたね。医療系の仕事は景気に左右されず、安定して収入を得られる職業だと思うので、そこも決め手として大きかったですね。 専門学校に通いながら、横浜にある技工所でアルバイトをしていたので、業界の雰囲気は就職する前にある程度知っていました。やや遅くまで仕事をする仕事なのかなぁと漠然と分かっていました。でも、モノを作る職業で、納得いくものを作るにはある程度、時間をかけることは不可欠だと理解していたので、特別ネガティブなイメージは持ってはいませんでしたね(笑) ― 学生時代のアルバイトの時はどんなことをされていたんですか?
私は横浜の専門学校に通っていたのですが、そのラボは、一年生の夏休み明けからポーセレン専攻チームと金属床専攻チームにグループ分けされて、私はポーセレンチームに所属しました。実は、そのときから今までずっと自費技工だけをやってきているんです。

保険の仕事は一切やらずに自費の仕事だけをしてきたというのはかなり特殊なキャリアだと思います。就職先も、自費技工ができるところという切り口で探しました。シケンで働くことになったのですが、当時の採用募集に「ポーセレンに興味がある方」と書いてあったから応募したんです。そして就職以来、ありがたいことにずっと、ポーセレン専門でやってきています。 ― アルバイト先のラボではなく、なぜシケンに?
当時アルバイトしていたラボも就職先として視野には入れていました。ですが、そこは技工士が5名ほどのところで、それほど規模が大きくなかったんです。私は、一度は規模の大きなラボで仕事をしたいという気持ちがあったんです。小規模のラボに比べて、大手のラボは、仕事のやり方であったり、仕事の内容に違いがあるのかということに興味があったんです。
四国で修行後、東京でメタルボンドチームの立ち上げに携わる
― シケンに入社されてからは?
シケンに入ってから最初の2年は高松で働きました。そこがシケンのクラウン技工のメイン拠点になっているので、そこでポーセレンやメタルボンドについてみっちりと基礎から修行させて頂きました。 入社した当時、周りの先輩たちが手際よくハイクオリティな技工物を製作されていることに驚きましたね。その光景を見たときに、自分もあんな風になれる気がまったくしなくて、1年くらい、自分の中に葛藤を抱え続けていましたね(笑)

2年目に入ると徐々に、高いクオリティを保ちつつ、手際も段々と良くなってきたと実感がありました。営業担当から私宛に「尾鷲さん、この技工物を作ってください」という形で指名を頂く機会が増えていきました。そういったことが積み重なると、多くの歯科医院から信頼を得られてきているな、と仕事の充実感も感じるようになりました。 ― 東京へはどのタイミングで?
高松で2年働いた後に東京に異動になりました。当時はまだ、東京にメタルボンドの拠点がなかったので、東京でメタルボンドチームを立ち上げるための異動でした。立ち上げ期ということで色々と大変なところはもちろんありましたが、振り返ってみればやりがいのある仕事でしたね。 ― 新たな事業部の立ち上げとなると、大変ではなかったですか?
正直、立ち上げは大変でしたね(笑)やはり仕事量の多さと終業時間の遅さのバランスが最初はメチャクチャでしたね。業界平均と比べるとシケンのラボは随分マシな方でしたが、今と比べるとかなり遅くまで仕事をしていました。でも、周りの人間関係にはとても恵まれていたから頑張れたと思います。

当時の部署には、5人の先輩がいて、その方々が常に手厚くサポートしてくれました。自分としては、初めての一人暮らしの大変さというのも味わっていたのですが、仕事が終わった後に先輩たちとごはんに行ったり、仕事面以外でも色々なサポートがあったので、いま思い返せば楽しい日々でしたね(笑) 私の一日の作業量は、会社が無理なく管理してくれるので、無理して焦ることなく仕事ができました。東京に来て2年目からは、自分もいよいよ新卒の後輩にメタルボンドを教えることになりました。東京のメタルボンドチームは自分一人から始まって、徐々にメンバーを増やしていって、今は5名ほどの体制でやっています。 私の入社当時は、最初からメタルボンド専門の技工士を育てたいという会社の方針がありましたが、今は逆に、新卒で入社するとまずは前装冠とか保険技工をある程度きっちりとやる流れになっています。やはり、最初は基礎を身につけた方がその後、急激に成長しますからね。

シケンでは、一人前の技工士として必要な技術・技工物がカリキュラムとして決められていて、そのステップをクリアしてから自費技工をするという流れになっています。他のラボと違い、きちんと規則やルールが決まっているので、とても働きやすいと思います。
ドクターの意図を反映できたと感じられるときが嬉しい
― どういったときに仕事の喜びを感じますか?
「尾鷲さんに作ってもらえてよかった」とドクターにいわれると、そりゃぁ、やはり嬉しいですよね(笑)シケンのように営業担当がいる大きな会社組織でも、患者さんの立ち会いをする機会は少なからずあります。各ドクターの好みや意図をきちんと汲み取って、技工物の作製に反映できたときに、ドクターからねぎらいの言葉を頂けたときは最高に嬉しいですね。
手で作る技術がないと、デジタルで良いものは作れない
― シケンさんはデジタル技工にも力を入れていますよね?
はい、そうですね。口腔内スキャナーの本格的な普及はいよいよこれからという感じですかね。シケンでは既に、デジタル印象の仕事がかなり来ています。正直、きれいに印象が取れていないケースもあるのですが、そこは技工士側でマージン設定をして対応しています。

これらの作業は、口腔内スキャナーが入ったから始まったことではなく、アナログ印象の時からあったことなんです。アナログ印象でマージンが不鮮明なとき、印象を取り直して頂くということはなかなか出来ませんからね(笑)シケンでは、経験豊富な技工士が不鮮明なマージンラインを補ってきたわけで、それをデジタルでも同じようにやっています。 ― デジタルでも手作業のスキルが役立つと。
間違いなく役立ちますね。というより、手で作る技術がきちんとないと、デジタルでも良いものは作れないと思います。また、足りない部分を私たち技工士が手作業で補っていくだけではなく、先生方の印象採得の技術向上のための指導も行っています。私たちがドクターの代わりにスキャンするというわけにはいきませんから、デジタル機器を持って行ってドクターにレクチャーしているという形です。
「終業7時は青信号、7時半が黄信号、8時過ぎたら赤信号」
― 今も遅くまで働かれているのですか?
いいえ、ビックリするくらい早く帰れます(笑)現状、シケンでは遅くても7時が終業で、7時よりも早く上がる時の方が多いです。私自身は子供がまだ小さいので早く帰って家族の時間を持てるのは嬉しいですね。仕事と家庭のバランスが良いと安心して働くことができます。終業時間が7時は青信号、7時半は黄信号、8時過ぎたら赤信号と言われています。

というのも、我々の経験則として、終業が8時を越えてくると会社を辞める人が出てくるというのがあるんです。だから、終業時間が絶対に8時をオーバーしないようにする。これは絶対的なシケンのルールです。作り手を守らなければ会社も守れないし、ドクターにも迷惑をかけてしまいますし、ひいては患者さんも守れないですから。 ― 遅くても8時に終業というのは、業界的にかなり早いですね。
もしかすると日本で一番早く帰れるラボかもしれませんね(笑)私は上司として、若手の仕事の不安や不満などをうまく聞いてあげるようには気をつけています。せっかく技工の技術を身につけたのに途中で技工士を辞めてしまうというのは、会社としてだけでなく業界として本当にもったいないと思うんですね。 ― 若手の方と接する際に気をつけている点などは?
若い人と仕事をする時には、僕の伝えたいことが伝わるような言葉を「選んで話す」よう心がけています。結果的には同じことを言っていても、言い方次第で伝わり方は全然違ってくると思うんですよね。たとえば、出来ていないところを単純に否定してしまうと、全てが否定されたみたいになってしまいます。

でも、ほめるところもしっかりと褒めつつ、「こういうところも直していこうね」という伝え方をすると、言われた人の受け取り方も大きく変わってきます。僕自身はあまり人と揉めたくない性格なので(笑)周りの人たちと、なるべくうまくできるように、後輩への気配りは特に気を使っています。
“社員の年収を上げるために、会社の売上を伸ばす”という考え方
― 給与はいかがですか?
給与については、シケンには「10年ビジョン」という会社方針がありまして、グループ全体の売上高を10年後までに100億に増やしましょうというものなんですね。この数字は、社員全体の平均年収を上げる必要がある、という経営陣の強い想いがあって、平均年収を上げるためにはグループ全体の売上がこのくらい必要だという流れで決まったものです。

結婚して子供が生まれるとどうしても独身の頃ほどの金銭的な余裕はなくなってくるのですが、シケンの場合、私個人の感想となりますが、良い暮らしをさせてもらえているかなと感じています。 シケンの技工士は地方出身者も多く、会社の寮もあるので若い人が働きやすい環境です。寮の人間関係もとても良いので、仕事以外でも仲間に助けられることが沢山あります。若い時代に寮生活をするとお金も貯まるし、メリットの方が大きい気がしますね。
最新設備が整う環境が、シケンの大きな魅力
― シケンさんの魅力はどういうところにありますか?
シケンの魅力ですか。うーん、何だろなぁ…。やはり資本力がありますので、小規模ラボには難しい設備投資が毎年できるということ、つまり常に最新設備が導入されているところですかね。若い人にとって、最新設備を使って仕事ができるというのは非常に意味があると思います。CAD/CAMのようなデジタル技術をはじめとして、技工業界に入ってきている新しい機械や技術というものを、いち早く感じ取れる環境に身を置くことができれば、時代の流れを感じながら、次にどんな技術を身に付けるべきかを考えられます。 最近は、シケンでお仕事を体験してみましょう!的な説明会を開催していて、シケンの職場の雰囲気や設備を実際に体験して頂けます。高校生や技工学校の学生さんが対象のセミナーはとても評判がよいので、興味のある方はぜひ参加してみて欲しいですね。 また、事前に連絡を頂ければ、通年で会社見学を受け付けていますので、学生さんに限らず、既に歯科技工士になられた方でシケンに興味のある方はぜひ一度、足を運んでいただければと思います。シケンは昔の古き良き技工所のイメージではなく、明るくクリーンな現代的な職場環境だと思います。
働き方を変えながら、一生働ける場所
― 尾鷲さんご自身の今後のキャリアプランは?
シケンは会社としてはかなり大きいので、長年務めていると、どうしても管理職的な部分、あるいは経営的な部分への関わりが出てきます。つまり、単に技工士として技工物を作るだけではなく、後輩を育てたり、会社を管理したりしなければなりません。そこをどう捉えるかですね。技工士という職業を選んだのに、技工士ではなくなってくる部分があるということですからね。 でも40代後半や50代になってくると視力が落ちていき、どうしても技工物のクオリティが下がってしまうケースがあります。だから単なる技工士としてではなく、管理職として働く場所があるのは良いことではないかと個人的には思います。一般的な会社と同じように、自分の年齢や経験や実績に合わせて、常に自分に見合った仕事が用意されているので、シケンは安心して一生働けるラボだと思いますね。 現在、会社の挑戦として、シケンから著名な技工士を育てていきたいと思っています。QDTに掲載されるような優秀な技工士を一人でも多く育てたいんです。そのため、著名なスタディー・グループやドクターの方々と一緒に勉強する機会を増やしているところです。

大きい会社になると、どうしてもサラリーマン的な働き方になりがちですが、シケンはそうしたところにとどまらない優秀な技工士を育てる必要があると感じています。大きな会社ならでは強みを生かし、最新設備を活用しながら世界に大きく羽ばたいていって頂けるような、志のある若い技工士の方々がシケンの仲間に加わってくれると嬉しいですね! どうもありがとうございました。
編集後記/高崎
歯科技工業界の雄、シケン。組織の力をフル活用しながら、最先端のデジタル技工にも積極的に取り組んでいる。若い人が将来の明確なキャリアプランを見据えながら安心して仕事できるのは、大きなメリットだ。会社として考え抜かれた人材育成計画があるからこそ、尾鷲さんのように優秀な技工士が輩出されているのだろう。働き方改革の時代において、技工士が働く魅力を感じられる数少ないラボだと思う。

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