株式会社ユニバル|東京都練馬区

株式会社ユニバルは、ノンクラスプデンチャー義歯「バルプラスト」専門の歯科技工所。「安心して、安定した、安全性」を目標に掲げ、品質の高いものづくりを徹底している。

代表インタビュー 社員インタビュー ラボの基本情報 取扱技工物 求人情報
ユニバル|堤義明

代表取締役
堤 義明(つつみ よしあき)

1977年  日本歯科大学 技工士科 卒業
1979年 (有)ユニオンデンタルラボ 設立
1999年  米国バルプラスト義歯~professor~ 取得
2001年 米国バルプラスト社公認インストラクター 
日本総代理店契約取得
バルプラスト 商標登録
2003年6月  上海ラボ 創業
2003年10月 (有)バルプラストジャパン設立
2008年4月6日 バルプラスト110レジン 認証
2011年2月  ユニオンラボとバルプラストジャパンを合併し(株)ユニバル 設立
バルプラストとの出会い
-ユニバルと言えば、全国のバルプラストの総代理店として有名ですね。
ありがとうございます。仰って頂いたとおり、うちはバルプラストというノンクラスプ・デンチャーに特化した歯科技工所なんです。昔は、他の技工所と同じようにクラウンやブリッジなども作る総合ラボでしたが、25年前のバルプラストとの出会いで今のような業態となりました。もともと私は義歯が得意でずっと義歯一筋だったんですが、私が42歳の時、取引先の歯科医院の先生から「面白い入れ歯あるから見にこない?」と連絡を頂いて。クリニックに行ってみると患者さんは台湾の方だったんですが、見たこともないデンチャーが入っていたんです。

「なんじゃ、こりゃ!?」と初めて見た時は、金属のパーツが全くなかったから、後頭部をハンマーで殴られたくらいの衝撃で(笑)金属のクラスプも曲げなくていい、メタルもいらない。「なんなんだ、このデンチャーは?!」と思いましたね。患者さんに「このデンチャー、どこで作ったんですか?」と聞くと台湾で、友達の歯医者さんに入れてもらったと。もっと詳しく知りたいという気持ちが抑えられず、すぐに台湾に行こうと思いました。

で、ちょうど年末の頃だったかな。日本のみかんを一箱、手土産に持ってすぐに台湾に行きました。台湾に着いて先生に詳しい話を聞くと、どうやらあのデンチャーはアメリカ製だということが分かりました。日本に帰るときにその先生が「今度、台湾にきたときに委託先の台湾のラボを紹介してあげるよ」というので帰国してすぐに台湾のラボに行ってみたのですが、そのラボがこのデンチャーの作り方は企業秘密だから詳しく見せてくれなかったんです(笑)で最後に「この次、来たときに見せてあげるよ」って言うわけです。だからその2週間後くらいにまた台湾に行ったんです。そうしたら「お前、本当に来たのか」ってビックリされて(笑)社交辞令で言ったのに本当に来たのはアンタだけだと(笑)でも粘った甲斐があって、製造方法を見せてくれたんです。

何もかもちんぷんかんぷん
-日本の入れ歯と同じような作り方だったんですか? いえ、使う道具も材料も機械も今まで見たことのないものばかりで。作り方を見せてもらったものの、完全にチンプンカンプンでしたね(笑)帰り際に「これあげるから日本で作ってみたら?」とペレット状になった材料をくれたんです。こっちだって20年以上も義歯を作ってきてるプライドがあるので帰国して見様見真似で作ってみたんです。そしたら全然まともな義歯が作れなくて。

今では当たり前の射出成形が、当時はまだ一般的じゃなかったんです。280度くらいの高温に熱した電気炉に入れてアルミ缶で溶かして、それをバァ~っと一気に押し出して1トンの圧力をかけてつぶしていくんですが、そんな機械がなきゃ、あんなデンチャーを作れるわけないんですよね。「あいつ、オレをからかって、作れないことは分かっているのに材料を渡したなって」って思いました(笑)

でも結局彼と仲良くなって、その後、台湾に3ヶ月間通ったんです。そうしたら「堤さん、日本でこれを売らないのか?」って聞かれてね。「あぁ、そっか。これもビジネスになるのか」って初めて気づきました(笑)自分としては純粋に知的な好奇心しかなかったんです。どうやったら、あんなに患者さんが喜んでくれるような入れ歯が作れるんだろうという想いだけで。

もしちゃんと商売として取り組むならば、やっぱり本場に修行に行かないとダメだなと思って、アメリカのバルプラスト本社にオファーを出してアメリカに通い始めました。当時はラボの仕事が忙しかったのでアメリカにずっと滞在することができず、3年間、仕事の合間の見つけては勉強に行きました。1年目は作り方を教わる程度でしたが、2年、3年と行くうちにアメリカのバルプラスト社からプロフェッサーやインストラクターの認定資格をもらいました。これはちょっとした自慢なんですが、インストラクターの資格を持っている人はアジアには2人しかいなくて、日本人では私だけなんです。

第一人者から直接指導をしてもらった
そもそも資格を持っている人が少ない理由は、そこまで一生懸命通う人がいなかったからでしょうね(笑)私のように毎年毎年来る人はいなかったんじゃないでしょうか。そもそもバルプラストはアルフレッド・ナギーさんというハンガリー人の歯科技工士が発明したもので、ナギーさんはこれを広めるためにアメリカに渡ったんです。

ヨーロッパは、戦後にナイロンが沢山作られていたのですが、これを歯科用に使えないかと目を付けたのがナギーさんだったんです。私がアメリカに勉強しに行った時にはまだご存命で、とてもかわいがって頂きました。印象を採る時やセットする時など、あらゆるテクニックを教えてもらいました。アメリカではデンチャリストと呼ばれる専門職があって、患者さんはラボに来て型を取ったりセットをしてもらえたりするんです。

私がアメリカに通い始めて3年目の時に日本の歯科技工所3社くらいからオファーが来ていたみたいなのですが、きちんと高い品質のデンチャーが作れる人が売らないダメだってナギーさんは言っていて。私はナギーさんに認めてもらえていたので、日本で販売する総代理店にして頂きました。
圧倒的なフィット感がバルプラストの特徴
実は今ではバルプラストと似たデンチャーは他社からいくつも出ています。でもね、バルプラスの品質は控えめに言っても他社のデンチャーとは全く別次元なんです。見ててください、ほら?フレキシブルさが全く違うでしょ。この柔らかさを実現しているのがこの薄さと弾性です。普通、この薄さで作ったら他社のデンチャーは硬いので割れてしまうのですがバルプラストは弾力性があるので薄くても割れません。

このように薄さと弾性を両立することによってフィット感が生まれるのです。バルプラストはフィット感が別次元で、食事がよく噛める。これは全ての患者さんが必ずおっしゃることです。また、従来の入れ歯のように金属のクラスプで他の歯に引っ掛けているのではなく、歯の根元を優しく包み込むよう歯の根本から支持している。だから一度パチンとはまると外れない安定感が生まれるんです。

人間の歯って実は、グッと噛んだ時に最大で2ミリくらいは沈みこんでいると言われています。特に歯周病の方は顕著に沈むそうです。バルプラストの場合、その沈み込みに合わせて構造的にちゃんと沈んでくれるわけです。しかも柔軟性があるから噛んだ時に根本の部分が広がり、支えている歯への負担が少なく、残ってる歯にも優しいデンチャーなんです。

あとは、バルプラストの材質はお餅がつかないので、何十年かぶりにお餅を食べられたという人もいました。普通のデンチャーだと裏側にべったりくっついちゃうから入れ歯用のガムしか食べられないけれど、これはガムでもお餅でも食べられます。でも、つかないっていうのは短所でもあるんです。歯科医院では修理ができないんです。だから一度、ウチのラボでお預かりしないといけない。これは短所です。あとは、素材が柔らかいので傷が付きやすいですね。外側はそうでもないけれど、内側はお煎餅食べたり魚の骨があたったりでざらざらになりますから、半年から1年に1度くらい研磨させて頂いています。でも、これらの短所を差し引いても、毎日の食事の楽しみが増えるのでトータルでは圧倒的に長所が勝っていると思います。

そしてさらに金属床とバルプラストを組み合わせるとより大型で複雑な入れ歯も作ることが可能です。ほら。実は私はわざわざ自分の健康な歯を抜いて上下にこの組み合わせのデンチャーを入れているんですよ(笑)なにごとも自分で経験してみないと自信をもって歯科医師や患者さんにすすめられないなと思って。たしかにバルプラストは従来のデンチャーに比べて味や温度が明らかによく感じられるんですよね。ビールやコーヒーの味がとっても美味しくなるし。自分で入れてみて、バルプラストは従来の入れ歯と比べ物にならないくらい優れたデンチャーなんだと確信を持ちました。

認可を取るまで
-では、アメリカから帰られた後はかなり順調に? いえ、バルプラストの国内での製造販売の認可を取るまでの約10年間もかかりました。認可を取るまでにずいぶん時間がかかるので厚生省に相談しにいったんですよ。絶対に良い商品だから一日も早く認可を取って患者さんに届けたい。どうやったら早く認可取れますかと。そしたら、認可が取れていなくても個人輸入ならいいよと言うんです。それで上海にラボを作って、まずは個人輸入という形で国内で販売することにしました。

上海のラボにはスタッフが当時70名くらいいて日本人4~5人が交代で出張して日本人が製品管理する体制を作りました。今では、昔からお付き合いのある先生が「上海で作ってたときの方が品質がいいんじゃないの?」なんて冗談を言われるくらい、国内と全く変わらない品質のものを作るように気を配っていました。

正直、認可を取るまでには億単位のお金がかかりましたね。アメリカでもヨーロッパでも認可されていた材料だけれど、日本の規格とはイコールじゃないということで最初から治験をやらなきゃいけなかったんです。動物実験もしなくちゃいけないし。それで、治験に詳しいコンサル会社にお願いしたんだけれども、よくよく聞いたら歯科の経験がないということが後から分かって。それでコンサル選定から再スタートしなければいけないなどのすったもんだがあって。鶴見大学と日大松戸で治験をやりましたが、患者が60名必要で、それだけでも何年もかかりました。

毒性試験なんかもやって、ひとつの試験で1000万円くらいかかったものもありました。でも、その時には既に上海のラボを使って、きちんと稼げるようになっていたから運がよかったんですよ。今よりもずっと人件費も安かったし、向こうにとっては外資系という位置づけでしたから応募してくれる人も多かったし。

-そこまで苦労したら認可の時は嬉しかったですよね? それは、もう(笑)やったーって感じですよね。なんてったって、苦節10年ですからね(笑)認可が取れたので上海のラボを閉めて国内で作るようになりました。今では上海でやっていた頃よりも納期は短くなって、普通なら1週間、急ぎなら3日で納品できるようになっています。認可が取れるまではクラウン・ブリッジも作る総合ラボだったんですが、国内のバルプラスト製造に責任を持つために、他の技工は一切やめてノンクラスプのバルプラスト製造だけに絞りました。

技工所を守りたくて築いた代理店制度
うちは今、代理店制度を取っているんですが、これには技工料のダンピング問題が関係しています。認可を取った頃はダンピング合戦になってました。私が技工所じゃなくてメーカーだったらダンピングなんか関係ないから材料をバンバン売っただけだったと思いますが、私は技工士だから技工料を守りたかったんですよ。それが会社として良かったのか悪かったのか今でも分からないです。もしかしたら、全国に2万軒3万件ある技工所にバンバン材料を売った方が利益は出ていたのかもしれないですからね。

でも技工所としては、どうしても高品質な技工物を安売りすることになるダンピングはしたくなかったんです。昨日まで3万円でつくっていたものを2万円で作らなきゃいけなくなったら、しわ寄せは全部従業員、つまり働いている技工士にくるじゃないですか。値段下げたから給料の3倍働けなんて言えませんから。

代理店契約にあたっては、バルプラスト専用に技工士を用意できるラボっていうのを条件にさせて頂きました。というのも、新しい製品だから最初にしくじると、ダメじゃんこのノンクラスプっていうやつ…という悪い評判がついてしまうでしょう。悪い評判がある新しいものなんて、使ってもらえないですから。

だから、専門の歯科技工士を確保できることを条件にして、うちで講習会を開いてそこに来てもらって品質を確保することを目指しました。使っていただく材料と機械は違いますが、義歯やってた人なら知っておくべき知識は基本的には同じですから。

今ではバルプラストの製造方法を体系化させていて教科書を用意しています。私がアメリカで勉強してきたことと日本で試行錯誤したこととを盛り込んだものです。例えばうちは全てのデンチャーの厚みをデバイスで測っています。バルプラストは2ミリ以上になったら固くなりすぎて柔軟性が損なわれますから。そういう厚みについての細かい話などもすべて教科書に書いてあります。もし代理店になって頂ければ、そのノウハウが学べます。

実は、困ったことに勝手にバルプラストを名乗って売っている会社もあるんです(笑)それほど良いものだったいうことなのは嬉しいのですが、品質が悪いバルプラストを広げられると困るので、うちでは全てのバルプラストにロット番号を付けたカードを付けて代理店に販売しています。代理店はいま全国に52軒あり、その下に販売店というのもあります。販売店は機械を購入するのが難しいような個人でやっている技工所ですね。それらを合わせるとだいたい200軒くらいになるんじゃないでしょうか。

今でも代理店は募集していますし、以前よりは代理店になるハードルも下げており、講習は受けてもらうようにして代理店を募っています。うちに来てもらうか、私が出向いて指導するか、どちらかは必須です。実際に会うことで、人となりや技術的なものも分かりますので、バルプラストの技術の底上げと維持に役立っていると思います。

いちばん怖いのは、きちんと技術を学ばずに見様見真似で作ることです。入れ歯を入れてみたら一緒に健康な歯が抜けてきちゃったみたいケースが起きてしまうことがあるんです。そうなったらバルプラストって全然だめじゃないか、と思われてしまいますからね。バルプラストがダメなんじゃなくて、ちゃんと作られていないものがダメなわけで、そこは線引きしたいんです。ウチのラボやしっかりと技術習得した歯科技工所が作れば間違いなく良いデンチャーなんです。

デンチャーと矯正は技工士としての腕の見せ所
-これからの技工業界についてどう思われますか? 技工がデジタル化して従来の歯科技工士の仕事は少なくなっていくんでしょうけれど、「デンチャー」と「矯正」は生き延びると思いますよ。技工士としての腕やセンス、技術が使えるのはその2つだと思います。他のは、デジタル化のおかげでそんなに技術がいらなくなってきているのは事実だと思います。

義歯を最低限作れるようになるには、どうしても5~6年はかかります。クラウンやインレー、ブリッジならば、CAD/CAMを使って新卒だったら2~3ヶ月で最低限のことを一通り覚えて、何かできるようになるだろうけれど、義歯は無理ですね。

うちの場合、分業制にして、一工程ずつ覚えさせるんだけれど、ひとつの工程をものにするのはやっぱり一年くらいはかかってしまいます。だいたい5工程あって、人にもよるけれどすべて経験するのに5~6年かかります。各工程を半年くらいに短縮すること不可能ではないけれど、義歯は症例は幅広いので、基本的な技術や経験をきっちり積まないと良い技工物が作れるようにならないんです。

10万個作っても割れたことが一度もない!
もしバルプラストが割れたら作り直しますよ、って患者さんに言っているのですが過去10万床以上作ったものが1度も割れたことがないんです。もし、緩くなっても自分でぐっと曲げれば調整できてしまいます。それでうまくフィットするようになります。こんな素晴らしいバルプラストとの出会いが私の人生を一変させました。特に、台湾、アメリカの時代は、バルプラストをやっていて毎日、本当にワクワクしていました。

従来の入れ歯と全く違う、すごいものが作れるから。ただ楽しかったのはアメリカから帰ってくるまででしたね。そこから日本で作りはじめるまでの間は産みの苦しみでした。でも、今では全国の入れ歯に悩む患者さんから入れ歯の悩みでお電話を頂きます。日本の国や社会に貢献できているという実感というか達成感があるので、苦しかったですが、苦労をした甲斐はありました。もしデンチャーで悩んでいる患者さんがいらっしゃったら、ウチはノンクラスプデンチャーの老舗で国内で断トツの経験があるので、ぜひ一度お問い合わせ下さい。もちろん、ノンクラスプ・デンチャーの委託先を探していらっしゃる歯科医院の方からのお問い合わせも大歓迎です。

歯科技工士
中村 明彦(なかむら あきひこ)

1989年  愛歯技工専門学校 卒業
2003年 ユニバル 入社
2010年 バルプラストインストラクター 取得 
硬組織よりも軟組織の上にものを作る方が奥が深い
-中村さんは、どのような経緯で歯科技工士に?
私が技工士になった理由はありきたりです(笑)私が学生の頃、歯科技工士は収入が良くて将来性がある仕事だと言われていたので。それが自分が技工士として一人前になった頃にはとっくに絶頂期は過ぎていまして(笑)つまり、そういうイイ話はだいぶ昔の話になっていた頃でした。気づけば毎日終電というような日々でした。

ユニバルには中途で20年くらい前に入社しました。学校を出た後は大手のラボに就職して、その頃は保険の義歯とか研磨とか、そういうことをやっていました。ずっと義歯ばかりを。

自分が義歯をやるきっかけになったのは学校時代の義歯の先生の影響なんですよね。その先生は金属加工の方が得意だったそうなのですが、義歯を作っていたんです。クラウンなどのように硬組織の上に技工物を作るより口の中の軟組織の上に技工物を作る方が難しいし、技術もセンスも求められるから魅力的なんだよね、奥が深いんだよね、と仰っていました。たしかに、硬い組織の上にものを作るのはできる範囲が決まってしまっていると。その時には、学生だから具体的なイメージは全然わかなかったんだけれども、ああそういうもんなんだ、この先生かっこいいなって、すごく印象的だったんですよね。

そのあと、学校を出て最初に就職したところで、何を担当したいか聞かれたんですよね。同期入社が4~5人いたんだけれども、みんな花形のポーセレンをやりたいというわけです。やっぱり義歯って言うと、汚れるし、力仕事もあって、みたいなイメージですから。同期で私一人だけが義歯を希望したんですが、会社も「え?本当に義歯でいいの?」って感じでsたね(笑)

実は何年か前に、ユニバルの下につつみ歯科ができました。社長の息子さんが歯科医師になられて、そこで歯科医師をされてるんですけれども、そこで実際の患者さんを歯科技工士が見る機会がすごく多くなりました。すると今までいわゆるマニュアル通りに作っていた義歯がいかに通用しないか、粘膜面が相手というのが、いかに多様で手ごわいものかを改めて感じています。

マニュアルが通じないと感じるのは、まず義歯の形があります。自分たちが思っている義歯の形っていうのは教科書で習う、いわゆる平均的な数値にもとづくものです。でも平均値外の患者さんが沢山いらっしゃって、たとえば義歯を作れるか入れることができるかが問題になるような方がたくさんいらっしゃるんですね。むしろ、教科書に載っているような平均値内の患者さんの方が少ないと言ってもいいくらいです。

もちろん、教科書的な平均値というのは基礎として頭には入っていなければならないんですけれども、それに対して、この人はこう、この人はこう、という個別の対応ができる引き出しが多くないとダメだと思うんですね。その引き出しの多さが、患者さんの満足度を得られるかどうかにつながってくる。平均値の引き出しの少ない人ほど、満足するものを作れる確率が小さくなる。

つつみ歯科ができたことによってウチの歯科技工士が患者さんのお口の中を実際に見る機会が増えて、私たちはたくさんの引き出しを持ったと思っているんです。いわゆるポーセレンだとかよりも、義歯を作る場合にその差が大きく出てくると感じます。

粘膜って、模型と実際の口腔内って全く違うんです。唾液の量とか、そういったものでも、総義歯なんかの吸着具合が変わってくる。模型じゃそういうことは全然分からないけれども、口腔内を見ると一目瞭然なんです。そういう意味だと、義歯を作る技工士が診療の現場に出てドクターとコミュニケーションを取ることの意義は大きいと思います。
パスポートすらない状態から上海ラボの立ち上げへ
-中村さんはバルプラストとの出会いって覚えています? それはもうバルプラストを初めて見た時はビックリしましたよ。私の場合、ユニバルに入社してからではなく以前の勤務先で対合歯を見たのが最初でした。ノンクラスプデンチャーが入っている対合歯だったんですよね。あれ?これって義歯なのかな?と思いました。初めて見た時にはこんなに柔らかいものというイメージがなかったので、模型の中にこうやって埋まっているのを見てどうしてこんなものが歯牙の歯頚部のこういう深いところまで入っているんだろう?と不思議でした。そういう体験をした後で、ユニバル、当時のユニオン・デンタルラボラトリーに転職したんです。

ここに来て初めて、バルプラストって、こんなに柔らかい素材なんだと分かりました。その時までの自分は義歯といえばアクリル樹脂というイメージしかないですから。それとは根本的に違うものだということを知って。で、堤社長に聞いたら、これは日本では作れない、これを日本に広めるためにこれから上海の工場を建てていくっていう話になって。自分がここに入ったのは2003年の2月ですが、その年の6月にはもう上海が始まっていた、そういうタイミングでした。

実は、私は上海工場の唯一の生き残りなんです(笑)まさか歯科技工士の自分が海外出張して義歯を作ってまた帰ってくるという生活になるなんて思いもしなかったですね(笑)当時、パスポートすら持ってなかったですから。堤さんに今から急いでパスポート取ってこいって言われて。すぐに上海に行って中国人相手に、まさかのラボをゼロからの立ち上げるなんて思ってもみませんでした(笑)

向こうの工場長として日本人スタッフが1人、その他に日本人スタッフ2人という体制でした。工場長はずっと上海にいたんだけれども、それ以外のスタッフは最初は2週間交代、次は1ヶ月交代という体制で行っていました。行きっぱなしではなく、行ったり来たりの生活で日本でも仕事を持って、向こうでも仕事をしてとそういう生活でした。

義歯の専門用語は日本語で教えていました。“MAIBOTSU”とか“SHINIKU KEISEI”とかね。中国語でももちろん単語はあるんだけれども、あえて日本語で教えました。あとは漢字を使った筆談ですね。何年もやっていると、こっちの言わんとすることを中国人スタッフはだいたい分かるようになってきまして、スタッフには通じるけれども、会社の外に出ると言葉がまったく通じないというのはよくありましたね。

当時からすでに仕事はかなり沢山ありました。日本全国から受注しているのに従業員の数が少なくて、自分たちもバルプラストの製作知識を試行錯誤して決して詳しいとはいえない中で現地スタッフにも教えなければならない。なおかつ、生活環境の違う中国の上海でやるというので、働く環境としてはやっぱり大変だったなと思います。

まず、海外に出ると仕事に対する考え方が根本的に違うんですよね。たとえば、期日までに納品しなければならないわけだから、義歯を作るのを失敗したら徹夜になったとしても最終的に作って納めるということは仕事なんだから当たり前とほとんどの日本人は考えると思うんです。少なくとも技工所で働いている日本の歯科技工士はそういう考えをすると思うんですね。

でも、海外ではそういう考え方はまずない(笑)失敗しちゃった、あ、定時が来たから帰りま~す、みたいな感じです(笑)エッ、ちょっと待って待って、これ今日中に作らないとかなきゃいけないんだけどって言うと、でも今日帰らなきゃいけないし~、みたいな答えが返ってくる(笑)そうかと思えば全く何の理由もなく、じゃあ帰ります、と唐突に帰ってしまったりもする。もう毎日がカルチャーショックですよね。根本的に仕事についての考え方が違うんです。日本の当たり前と外国の当たり前が違うことを知りましたね。

同じようにフィリピン出張の時期もあったんですが、現地の人が時間にすごくルーズで。朝の交通渋滞がすごいんですが、こちらとしては毎日混んでるのが分かってるんだから早い時間に来なきゃだめでしょ、だって仕事のスタート時間は決まってるんだから、と思うわけです。だから、混雑を見越して早く出てきなさい、と言うと「ん?」という表情になる。「この交差点は毎日混むんです、雨の日なんか全然動かなくて」って言うんです。私が、だったらもっと早く家を出るんじゃないの?というと「ん~~???」みたいな(笑)

そういう時間感覚というか国民性というか、大変だったのは仕事の内容以外の部分ですよね。中国なんかだと、国慶節なんかの祝日で田舎に帰るとそれっきり帰ってこない従業員が何人もいたりとか(笑)

そういうのも最初はすごくびっくりしましたね。考え方がこんなに違うんだって。ここは日本の企業だからそういうのは通用しないよ、って教えるのもできるのかもしれないですけれど、そういうふうに対応するとぶつかることもいっぱい出てきて、ぶつかるとだいたいうまくいかなくてね。彼らはすごくプライドが高いから、そういうところをこっちも理解しながら、やっていました。

そう思うと、日本人てほんと真面目ですよね。海外に行ってみたら、会社って遅れてきてもいいんだ!?それでも仕事って成り立っちゃうんだ!?みたいな、ある意味、発見がありましたね。私たち日本人はは遅刻とか休むなんてことはまず考えていなくて、多少頭が痛かろうがだいたい出てくるでしょう。

でも海外に行くと、奥さんがちょっと具合悪いから今日休みます、みたいな連絡が来て、エッ休んじゃうの?!って驚くんだけれども、結局彼らの中で仕事よりも家族の比重の方がずっと大きいんですね。日本だとどうしても仕事の方に重きを置くんだけれども、彼らは全然違うんだなと。
バルプラストの特徴
-中村さんにとってバルプラストの魅力って何ですか? バルプラストって保険のデンチャーと同じような調整をしてしまうと全然ダメなんですよね。削るポイントも違いますし、削るコツがあるんです。保険デンチャーのアクリル樹脂とこの柔らかいポリアミドは全然違っていて、ちょっとクセがある。先生がそれに慣れていなくて、先生の調整でボロボロになって返ってくるという問題が最初のことはありましたね。

最近では、長年バルプラストを取り扱ってきた先生ならどこらへんが当たるのかっていうのはもう心得ていて、そういうトラブルはありません。我々も手厚くサポートしてますし、先生方のノウハウもだいぶたまってきていると感じますね。
働く場所としてのユニバル
-職場としてのユニバルはどうですか? バルプラストの国内認可前は大変でしたけれども、今は歯科技工所としては恵まれていると思います。人生やり直せるとしても、もう一度ユニバルに入ると思います。そのくらい働く環境が素晴らしいです。それにこんな素晴らしい材料を使った入れ歯を作れるなんて歯科技工士冥利に尽きると思うんですよね。

バルプラストで使われているポリアミドという材料はカテーテルでも使われている安全な素材で、人間の体にとって負担の少ない材料なんです。アメリカでは1963年から既に使われていて歴史のある入れ歯でした。

ウチの堤社長は、これを日本で保険導入することができれば患者さんの利益が大きくなる、義歯の患者負担はすごく少なくなると言ってたんですよね。社長って…いい人なんでしょうね。社長はなんというか、良い出会いを引き付ける力を持っている人なんですよね。たぶん当時、バルプラストの存在を知ってるのは社長以外にもいっぱいいたと思うんです。

ただそれを海外まで行って作り方を教えてもらってくるなんて、なかなか出来ることじゃない。大体の人は、どこの材料なんだろう、とか、この材料ってどこの材料屋さんに頼めば入るんだろうって、せいぜいそのくらいだと思うんですね。社長はその一歩先じゃないですか(笑)これを作りたいから作るためにはどこでどうしたらいいのか調べて、アメリカまで行くってなかなか出来ることじゃないですよね(笑)

ユニバルは、社長がそんな感じですから社員とも同じ目線でフラットに関わる感じなんです。大手ラボだと社長に会ったこともない、というしゃべったこともないっていうところは結構あると思うんですが、うちの社長は常に社員に声をかけるし、社員との距離はずいぶん近いんじゃないでしょうか。とにかく働きやすいし、こんなに風通しのよい技工所ってなかなかないと思います。

社長って、こういうことをやってみたいっていったときに、ダメって言わないですよね。もし自分の提案が社長の考えとは違ってたとしても、社長は、「まあ、まずはやってみてくれ」と言ってくれるんです。事前に、頭ごなしにダメだと言われないだろうなぁと思えている時点で、こちらも色々話しやすいっていうところはありますよね(笑)

ユニバルがこれからもノンクラスプの義歯だけでいくのか、それとも総合ラボの方向に行くのかは、これからの若い従業員の育ち方によると思っています。下の階に歯科医院を持っていて補綴もできて義歯も入るというように口腔内を一貫してやれるところってなかなかないと思うんですね。補綴物が海外に流出している現状もあるので、最終補綴物まで一貫してみられることが強みになるかもしれないとは思っているんです。強みになるのであれば、義歯専業でなく最終補綴物までやってもいいのかなと思うときもあります。

-若い歯科技工士に何かメッセージを頂けますか?
これから技工士になろうとしている人に、デンチャーの良さを伝えるとしたら、学生時代に先生に言われたことに尽きますね。相手が粘膜だと自分が思っている以上に分からないことが絶対的にあるんです。その奥深さにぜひ触れてほしい。こんなに面白い分野はないです。

そして、義歯で困っている患者数というのは、ポーセレンで困っている人よりもずっと多いし、患者さんのお困りごとが大きいだけに、よい義歯に巡り合った患者さんの喜びは大きいし、患者さんの喜びにふれる私たちの喜びややりがいも大きいと思うんです。そういった仕事の喜びややりがいを多くの若い人たちにに知ってもらって興味を持ってもらい、一人でも多くのデンチャーの技工士が増えたら嬉しいですね(笑)
株式会社ユニバルは、ノンクラスプデンチャー義歯「バルプラスト」専門の歯科技工所。「安心して、安定した、安全性」を目標に掲げ、品質の高いものづくりを徹底している。
株式会社ユニバルの基本情報
株式会社ユニバル|東京都練馬区
株式会社ユニバル|東京都練馬区
〒178-0063
東京都練馬区東大泉3-31-11
<沿革>
1979年 有限会社ユニオンデンタルラボラトリー 設立
1990年 有限会社ユニオンラボ 社名変更
2003年 有限会社バルプラストジャパン 設立
2008年 バルプラスト110レジン 認証取得
2011年 株式会社ユニバル 設立
   (有)バルプラストジャパン・(有)ユニオンラボ合併
株式会社ユニバルへのアクセス

技工物種類 対応可否
保険FMC
自費クラウン/ブリッジ
自費インレー・アンレー
CADCAM冠
チタン冠
インプラント(ストローマン)
インプラント(ノーベル)
インプラント(その他)
デンチャー(保険)
デンチャー(自費)
矯正
マウスピース矯正
マウスガード
自費TEK
ラミネートべニア

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