Part 1:データが示す2025年の歯科業界
2025年の日本の歯科業界は、「成熟」「デジタル化」「予防へのシフト」という3つのキーワードで特徴づけられます。1. 経営環境:「飽和」と「デジタル化」がもたらす変化
歯科医院の経営は、一つの成熟期に達しています。歯科診療所数は減少傾向にあります 。一方で、個々の医院経営を見ると、損益差額は平均1,072万6千円を確保しており 、多くの医院が安定した経営基盤を維持しています。
その経営を支える大きな要因がデジタル化です。今や保険診療の主役となったCAD/CAM冠の届出施設は5万8926施設に達し 、デジタル技術が全国のすみずみまで浸透していることがわかります。1施設あたりの設備投資額も平均348万5千円となっており 、各医院が未来を見据えた投資を続けている姿が浮かび上がります。
2. 働く人々:高齢化の波と、支える専門職
業界を支える「人」にも変化が見られます。歯科医師の平均年齢は53歳で 、業界全体が高齢化の課題に直面しています。担い手不足は深刻で、一部の大学歯学部では9校が定員割れを起こしている状況です 。
一方で、チーム医療の重要性は増すばかりです。就業歯科衛生士は14万5,183人 、就業歯科技工士は3万2,942人と 、多くの専門職が歯科医療を支えています。特に歯科衛生士は、後述する「予防」の分野で中心的な役割を担っています。
3. 国民の口腔と新たな需要:「治療」から「予防とケア」へ
国民の口腔衛生意識は劇的に向上しました。12歳児の平均むし歯等数はわずか0.53本となり 、「むし歯の洪水」と呼ばれた時代は過去のものとなりました。80歳で20本の歯を保つ「8020」の達成者も61.5%に達し 、多くの国民が健康な歯を長く維持する時代に入っています。
この変化は、新たな需要を生み出しています。それは、超高齢社会における高齢者歯科の重要性です。しかし、データは厳しい現実も示しています。要介護高齢者の歯科訪問診療において、需要に対する供給はわずか50%に留まっているのです 。健康な高齢者が増える一方で、本当にケアを必要とする人々へのアプローチが喫緊の課題となっています。
Part 2:2030年、歯科業界はこう変わる – 未来予測
これらの2025年のデータを基に、5年後の歯科業界の姿を予測します。予測1:歯科医院の「専門化」と「協業化」が進む
歯科医院の減少傾向 は、経営者の高齢化(歯科医師の平均年齢53歳 )と共にさらに加速するでしょう。生き残る医院は、二極化していきます。
一つは、最新のデジタル設備を揃え、複数の専門医が在籍する「地域中核型クリニック」。もう一つは、訪問診療、小児、矯正など、特定の分野に特化した「専門特化型クリニック」です。
また、一院で全てを完結させるのではなく、専門分野に応じてクリニック間で患者を紹介しあう「協業化」が一層進むと考えられます。
予測2:歯科技工士の働き方が「リモート」と「専門化」へ
デジタル化の波(CAD/CAM冠の届出5万8926施設 )は、歯科技工士の働き方を根本から変えます。CAD設計は場所を選ばないため、在宅で働くリモート歯科技工士が一般化するでしょう。これにより、育児や介護などで現場を離れていた優秀な技工士が復帰しやすくなります。
一方で、仕事は高度なデジタル設備と専門知識を持つ「デンタル・デザインセンター」のような大規模ラボに集約される傾向が強まります。インプラントや審美補綴など、高度なスキルを持つ専門技工士の価値はますます高まり、歯科医師から指名される存在になるでしょう。
予測3:「口腔ケア」が全身の健康を支えるハブになる
2030年、歯科医院の役割は「歯の治療」から「全身の健康を口から支える」ことへと大きくシフトします。8020達成者の増加 により、高齢者の関心は「歯を残す」ことから「健康に、美味しく食べる」ことへと移ります。
訪問診療の需要(需要に対する供給が50% )は爆発的に増加し、歯科医院は地域の医科、介護施設、薬局と連携する「地域包括ケアシステム」に不可欠なハブとなります。歯科衛生士による専門的な口腔ケアが、誤嚥性肺炎や認知症の予防に貢献することが広く認知され、その社会的地位はさらに向上するでしょう。歯科は、健康寿命を延ばすための最前線となるのです。
AIが予測した2030年の歯科業界はいかがでしたか?
最後に、AIが導く結論は次の通りです。
2030年の歯科業界は、より専門的に、よりデジタルに、そして地域社会とより深く結びついた姿へと進化していくでしょう。変化の波を乗りこなし、新たな需要に応える準備が、今まさに求められています。
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