コラム「口腔内スキャナーの普及状況と 具体的な臨床応用例」

執筆:高崎宏之
アクウェスト(株) 代表取締役、東京都歯科技工士会顧問、京都大学 特任准教授(産学連携センター(宇宙ユニット))|外資系コンサルティングファームで、国内外の製薬、飲料、消費財、総合商社、官公庁、化粧品、産業機械メーカーなどの新規事業の立上げ、事業の海外展開支援、M&A、PMI、中期経営戦略策定、営業改革、グローバル人事組織改革などのコンサルティング業務に従事。同社退職後、日本や世界の医療業界に、徹底的に顧客目線に根差した、革新的で高品質な事業/サービスを創出したいとの想いから、acwest Inc.を設立。京都大学大学院 理学研究科修了 理学博士。2019年より東京都歯科技工士会顧問に就任。



口腔内データの可視化で患者のデンタルIQを向上


近年、歯科分野でのデジタル化が急速に拡大し、中でも口腔内スキャナーは多くのドクターが注目しています。光学印象機能の精度は年々向上しており、「印象や石膏の硬化膨張によるゆがみを解消できる」「感染性の廃棄物を減少できる」「材料コストを削減できる」ことなどが、ドクターからの高い評価につながっているようです。また、撮像したデータはモニター上ですぐに可視化され、3Dデータとして好きな箇所を自由に見せられるため、いわゆる患者のデンタルIQを向上させる、チェアサイドでの患者説明用ツールとしても活用されています。

2013年以降、口腔内スキャナーの精度が向上

精度に関しては、依然として印象模型の方が優位性があるのではないかという声を耳にしますが、2013~14年ごろから徐々に口腔内スキャナーの精度に関する学術論文が増え始め、「口腔内スキャナーでも臨床的に許容できる範囲の精度を確保できる」(Schaeferetal.,2014)といった報告や、「口腔内スキャナーによる歯列模型は高い精度を有し、石膏模型との間には大きな有意差がなかった」 (Wiranto., 2013 ; Naidu &Freer., 2013)という 先行研究による報告が増えており、口腔内スキャナーの精度に関する評価は徐々に確立されつつあります。

iTeroが急拡大!中国・韓国メーカーも台頭


2015年までは、シロナ社の『セレック』の独壇場でしたが、その後、欧米を中心としたメーカーが参入し、現在では中国や韓国のメーカーが徐々に台頭してきています。

また、アライナー矯正専用という位置付けでもあるAligntechnology社の『iTero』は、昨今のアライナー矯正の普及に伴い、先行メーカーを急追しているようです。現状の国内市場全体としては、『セレック』が市場の約40%を占有しており、次に『iTero』『Trios』『Trophy』と続いています(図1)。弊社の調査では全国の約4,000~5,000軒の歯科医院で口腔内スキャナーが導入されているのではないかと推測しています。口腔内スキャナーは高額な機種が多く、販売価格が気になりますが、弊社サイト「技工士ドットコム」内で、口腔内スキャナーの販売価格(実勢価格/見積もり価格)の調査結果を公表していますので、ぜひご覧ください。一方で、歯科技工所側から歯科業界を見てみると、確かにここ1~2年で急速に口腔内スキャナーの導入が進んでいることを実感しています。特に、単独歯のクラウンや少数歯欠損におけるブリッジ製作に限れば、製作依頼全体のうち約2~3割の技工物が、口腔内スキャナーによる光学印象によるものとなっている歯科技工所もあります。

嘔吐反射の患者の負担軽減も


また、印象時の負担が軽減されることも、口腔内スキャナーの魅力になっているようです。トレーに盛った印象材を口に入れるのが苦手な人は、舌や口蓋に器具や指が当たることで反射的に「オェッ」となってしまいます。一方、撮影に慣れたドクターやスタッフが
口腔内スキャナーを用いると、全ての嘔吐反射を抑えられるわけではありませんが、わずかな配慮をすれば、先端のカメラが口腔内にほとんど触れることなく歯や歯肉を撮影することができます。こうして、患者満足度の向上につなげることも可能です。

実際に、どこまで臨床現場で使えるのか?

多くの場合、口腔内スキャナーは、単独歯のクラウンや少数歯欠損におけるブリッジ製作などで利用されていますが、スキャンスピードが圧倒的に早く、う蝕診断サポート機能を搭載している3shape社の『Trios4』や、被写界深度が深いシロナ社の『セレックPrimescan』など高価格帯の口腔内スキャナーは、どのくらいの実力を備えているのでしょうか。

シロナ社の『セレックPrimescan』を例に、y’s・デンタルキュア(東京都豊島区)院長の三井祐一郎先生にご協力いただき、実際の臨床応用例を見てみたいと思います。今回はクラウンやブリッジではなく、あえて被写界深度が必要となる臼歯部のコアを、実験的に製作してみました。

シロナ社の『セレックPrimescan』は特に被写界深度が深いといわれ、撮影時にぼやけることなく、非常に精度の高い口腔内データを取得することができ、歯科技工士とデジタルデータでのやりとりをスムーズに行うことができるとされています。結果として図2の通り、最新の口腔内スキャナーを使えば、深い被写界深度が必要とされるコアでも十分に対応可能なことが分かりました。また、シリコン印象が不完全だった場合は通常、印象をやり直さなければいけませんが、口腔内スキャナーの場合は撮り足しをすればよいだけなので、診療効率向上や患者負担の減少につながります。ただし、スキャナー自体は高額なので、投資対効果を考えた上で、高価格帯か普及価格帯のどちらの製品を導入するのか、試算する必要があるでしょう。

※当コラムは、弊社代表の高崎が歯科専門雑誌「アポロニア」に寄稿した記事に、加筆・修正を加えたものになります。

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