代表取締役
堀口 隆司(ほりぐち たかし)
1995年 日本大学付属歯科技工専門学校 卒業
1995年 埼玉県内技工所 入社
2004年 デンタルスタジオ和 設立
2009年 スタディーaグループDCV主宰
手取り9万から始まった技工士生活
― 堀口さんはどのようなキャリアを歩んできたのですか?
初めて入ったラボでは3年間ほど働きました。最初の2年間は手取り9万円でした。よくアルバイトだったんですか?と聞かれるのですが、ちゃんと正社員として働いて9万円だったんです(笑)
― なぜ、そんなに少なかった?
そもそも、そのラボに仕事がなかったんですよね。仕事がないから早く帰れるんですが、給料が全然もらえない。さすがに生活できないので転職しようと思いました。メチャクチャ忙しくて、自分の実力や技工物を作るスピードとかが試されるような、ガツガツ仕事ができるラボに転職しようと思い、求人紹介の人に「かなり忙しいラボで有名ですが大丈夫ですか?」と聞かれるくらい忙しいラボを選びました。面接でも、実力を試してみたかったので「大丈夫です!やれます!」と答え、そこに転職することになりました。
高収入になるも、体調を崩す
― 転職先では順風満帆でした?
そうですね、転職してしばらくはめちゃくちゃ順調でした。転職先のラボでは自分のやった仕事に対して歩合で給料がもらえたので、収入はぐんぐん上がりましたし。すぐに普通のサラリーマンより多い金額を稼げるようになりました。それで「オレって、すげえなって」って、ちょっと天狗になっちゃったんですよね。今思い返すと恥ずかしいことなんですが、大切なことや何のために技工士になったかっていうことを忘れてしまっていたんです。本来は、患者さんのために仕事をしなければならないのに…。
― 何かトラブルが起きた?
その後、毎日夜中の1時2時3時まで働く状態がずっと続いて、しばらくすると技工所のナンバー2くらいのポジションになっていました。手を動かすのが早いし、そこそこうまかったと思うので、上司が自分の下に5人の後輩をつけたんです。
つまり、自分自身の仕事も抱えつつ、5人の後輩を教えて技工物のチェックもしなければならない状態です。10分おきくらいに次々と「これを見てください、これを見てください」って後輩たちがやってくる。「さすがに、これは無理だなぁ…」と思っていたら、案の定、体調を崩してしまったんです。
自宅に引きこもる
― 長い間、仕事を休まれていたんですか?
結局、会社を辞めて、自宅に引きこもってしまいました。普通はインタビューでこんなに赤裸々に言うもんじゃないですよね(笑)しかも自分の場合は、結婚生活をしながらの引きこもりでした。ちょうど29歳から30歳の時ですね。自宅では、色んなことを考えてましたね…。
仕事を頑張れば給料は上がっていくけれど、そうなると技工所に缶詰になって働いて、技工をやっているというよりも、ロボットのように単調にものを作っているだけになってしまう。そうすると、自分が技工士になった時に考えていたような、患者さんとドクターのために、いいものを作りたいという思いがどこかへいってしまうとか。
― 色々と考えているうちに、抜け出せなくなってしまった?
そんな感じです。自分たちは患者さんやドクターのために良いものを作りたいと頑張っているはずなのに、セミナーに行くとそういう部分はなんだか置き去りになっていて「どこの学校を出た」とか、「あの人に教えてもらった方がこの人よりもいいよ」とか派閥争いみたいな話があったり。自分は文句を言ったり、どっちが上手いとか下手とかの主張をすることが性に合わなかったんです。
自分は甘いのかもしれないけど、そういうのはあまり好きじゃないんだよなぁ~とか思っちゃう。その一方で、有望な若手は馬車馬のように働かされてどんどん辞めていっている。そういう歯科業界に横たわっている、あんなことやこんなことを色々考えると、自分はもう本当にこんな業界は嫌だと思って、ますます引きこもりから抜け出せなくなってしまいました。
引きこもり生活を脱するきっかけ
― どのようなきっかけで、復帰することに?
半年間ほど引きこもってプータローをやってたんですが、ある日「おい堀口くん、どうしたんだ?」って、あるドクターの方から連絡をもらったんです。体調を壊して、技工所を辞めて、情緒不安定になって、歯科技工士の仕事を辞めようと思っていた、まさにその時でした。そこで初めて家族以外に「技工士の仕事は辞めちゃったんです」という話をしたんです。
以前、働いていた会社も自分が辞めたことを伝えていなかったみたいで、そのドクターの方は、自分が戻ってくるものだと思って半年間も待っていてくれたらしいんです。それで改めてご挨拶に行かせて頂いて、実はこれこれこういう事情で、自分の考えていることはこうで、それでこの半年間ずっと悩んでいたんですとドクターに正直に話しました。
― 何か自分の心の中で変化があった?
そうですね。すると、そのドクターの方から「ちゃんと患者さんを見て作りたいとか、堀口くんの考えていることは素晴らしいことだ」と仰ってくださって。「歯科業界にそういう気持ちで仕事をする歯科技工士が必要だから、ぜひまた技工士を続けたらいいんじゃないか」と言われて。「今まで通り、自分は堀口くんに仕事を出すから」と言って頂いて。いやぁ~。。。その言葉を言われたときは、ほんと泣けましたね(笑)その方のおかげで、もう一回、頑張ってみようかなという気持ちになれて、それで歯科技工士の仕事に戻りました。
― 久しぶりに仕事をしてみてどうでした?
そのドクターの方から頂いた仕事が、独立後の初仕事でした。金額的には大きな仕事ではなかったんですが、そんなことは自分には全然関係なくて。とにかく自分に依頼された目の前の仕事を一生懸命やろうって思いましたね。仕事をやりながら「あぁ、これが仕事なんだ」って実感がわいて。いや~、あの時の気持ちは一生、忘れられませんね。
自費の技工物に特化したラボを立ち上げる
― すぐに自分のラボを設立したのですか?
いやいや。そんなすぐには無理でした。とりあえず技工士への復帰を決めたのですが、正直、半年間も引きこもりをしていたので、そんなに資金があるわけでもなく。でも色々と声をかけて下さったドクターのためにも早くやらなきゃと思って、とりあえず1ヶ月くらい待っていてください、どこかに部屋を借りてとにかく作れる環境作りますからって。幸い、自分より先に独立していた友人が、場所貸しのラボというものがあることを教えてくれました。歯科技工の機材もそこで貸してくれたので、家賃を払ってそこに入って、個人事業主として開業して5年間そこでやりましたね。
うちのラボのホームページに、「真心を届ける」と書いてあります。それは、復帰して最初の仕事で感じたことを言葉にしたんです。自分より上手い人、下手な人、自分より給与が高い人、安い人がいる中で、僕みたいな人をいいと思ってくれるドクターにとって、自分って他の技工士と何が違うのかなと考えてみたんです。そう考えたときに僕は、自分の精一杯のものを、つまり真心をこめて精一杯作ったものを納品している気持ちだけは誰にも負けないなと思って。
それが自分の一番の売りじゃないかなと思ったんです。だから、単に技工物を作って届けるということではなく、自分の技工物イコール自分の真心と言えるようなものを患者さんやドクターに届ける、という想いを「真心」という二文字に込めました。
― 最初から自由診療の技工物ばかりを手掛けていたのですか?
いえいえ、今でこそ自費の技工物を専門のラボになっていますが、最初の一年半くらいは保険の技工物の受注もあったんです。前職の先輩たちが心配してくれて保険技工の仕事だったら回すよって紹介してくれたので。でも実際、保険の技工物ばかりだと、やっぱり前にいたラボと一緒で、大量生産をして時間に追われるラボになっちゃう。これでは真心を届けられないなと思って、自費中心でやらせてくださいと歯科医院にお願いをしてまわりました。最初は1件だったのが2件になり、それが3件、4件と増えていって、徐々に自分の仕事に対する想いを分かってもらえて、自費専門のラボになったいったという感じです。
挫折があったから、人の大切さに気付けた
― 引きこもりの経験は、堀口さんにどのような影響を?
恥を覚悟で言うと、自分は挫折を味わっていなかったら優秀な後輩技工士を食いつぶす技工士になっていたと思います。その意味では、自分が体調を崩して引きこもりになり、挫折を味わったのは良かったのかもしれません。歯科技工業界って、修行期間という建前で、やる気のある新人を雇っては潰しているようなところがあるんですよ。安い給料でばんばん雇って、どんどん仕事をやらせる。上の人たちは、いい仕事は下に投げないんです。年功序列ですからね。
それで、新人は売上が上がらない仕事をやらされて、働く時間が長いのに給料は安いから面白くないわけですよ。みんな夢を持ってこの業界に来てるのに、いい先輩に出会わないと、いつまでたっても浮上できない状況が続くわけです。
― そんな業界の雰囲気を変えたいと。
そうなんです。もし自分が挫折を味わわずに自分のラボを持っていたら、値段を他のラボより安くして内容に関係なくバンバン仕事をとってきて、後輩にどんどんやらせるみたいなラボになっていたと思うんです。そうして、自分の下で毎日夜遅くまで働いてる若い技工士さんに、ちょっとずつちょっとずつ技術を教えながら、飼い殺しにしてたんじゃないかなって。でも挫折してはじめて、人と仕事の大切さを心の底から理解しました。
そして、自分は「技工」が好きなんだということも。だから、再出発することになった時に自分のラボでは「人」を大切にしようと思いました。技術で日本で一番上手くなるとか、売上でトップを取るとかいうのではなく、自分は、自分のお付き合いさせて頂いている人たちと、いいものを作ろうという気持ちを大切にしよう、と。そのことを真心と表現をしています。
患者さんとドクターを第一に考え、自己満足にならない
― いま、ラボで力をいれていることは何ですか?
最近は、若手技工士の教育を頑張っています。自分は、根性・根性・ど根性でやってきた技工士なので、ちょっと苦労していますけど(笑)きっと今の時代に合っていないんでしょうね、私の価値観が(笑)だから僕のラボの後輩たちには、ゆっくりと、その人に合った成長スピードで技術を磨いてもらっています。自分の価値観を一方的に押し付けるのではなく、若い人たちの感覚に合わせて。
とにかく彼らには「患者さんのために」とか「ドクターのために」という気持ちだけ持ってもらえればいいです。あとは、最後とは自分が責任をもって何とかしますから。職人は、「飯食えるのが半人前、技術が出来て当たり前、人を遺せて(のこせて)一人前」という言葉を聞いたことがあるんですが、僕もいつか、自分の技術や考えを継承してくれる人を遺せたら最高ですね。
― 堀口さんにとって、歯科技工士の仕事の魅力とは?
最近、歯科技工士の数が減っていると言われていますが、歯科技工士の仕事って、めちゃくちゃ面白いんですよ。例えば、自然な歯に近づけるために微細な違いを付けているときがすごく面白い。若い子には自然のものには直線のものはないんだよって教えているんですけど、人工の骨ってまっすぐじゃないですか。だから、こういうふうに細かく細かく刻みを入れていくんですけれども、そうするとほら、もうこんなにニュアンスが違うでしょう。
今の時代はコンピュータで簡単にできるっていうけど、本当に細かいディテールに突き詰めるとゴールがないんです。一方で、限られた時間内に患者さんとドクターを喜ばせることがゴールだと考えると、そういう技術だけを掘り下げていくのはダメなわけです。単なる自己満足みたいになっちゃうから。そこのバランス感覚が、すごく難しいし、この仕事の腕のみせどころの一つですね。
ドクターとチームプレーをする
― 最後に、ラボの特徴を教えてください
歯科技工物って、義足や義眼と同じで人工臓器だと思っているんです。歯科技工士はそういうものを自分の手で作れる。しかも歯って笑顔とか顔の表情と関わってくるから、その人の人生を豊かにするすごいポテンシャルがある。例えば、うちのラボでは噛み合わせに関して、たっぷりと時間をかけて検討しています。口腔内の写真を見ながら、患者さんとドクターと技工士で話し合いをしたりもします。
自分が立ち会いに行く時には、ひと枠30分くらいかけて写真を撮ったり色の説明をしたり、ドクターと患者さんと色々な話をします。あるドクターには、こんな技工士は他にはいないって言われたことがありますけど、こういう患者さんと直接コミュニケーションが取れることが、これからの歯科技工士には必要な能力になっていくと思うんですよね。
― 堀口さんのラボに興味を持った方に一言。
技工士をやっていて一番嬉しいのは、お金は出すからいいものを作ってきて、といった感じで技工物の作製をホイって頼まれるんじゃなくて、ドクターとパートナーとしてチーム医療を組むような働き方ができるときです。患者さんもドクターも、歯科医院のスタッフさんも、技工士も、みんなが一緒になって笑顔になれるときが嬉しいんですよね。もちろん、そういうことばかりではないですが、今後も、そういう機会が一つでも多く味わえるように、頑張っていきたいと思っていますので、ウチのラボの考え方に興味をもって下さった方がいれば、ぜひご連絡ください。
ありがとうございました
編集後記/高崎 今後も若手歯科技工士にとって、歯科技工業界が魅力的であり続けて欲しいから、と自分の様々な経験や、挫折した経緯、業界に対する個人的な見解を赤裸々に語ってくださった。取材中に、ラボのスタッフに具体的なテクニックを分かりやすく説明している姿が印象的だった。ドクターのパートナーとして、真心を込めて仕事をしたい、という想いが強く伝わってきた。
デンタルスタジオ和の基本情報
〒343-0838
埼玉県越谷市蒲生3-7-7 TOHOビル1F
<沿革>
2004年 デンタルスタジオ和 設立
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デンチャー(自費) | - |
矯正 | - |
マウスピース矯正 | - |
マウスガード | - |
自費TEK | - |
ラミネートべニア | - |
求人項目 | 概要 |
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募集職種 | 求人情報がありません。 |
給与/賞与 | 求人情報がありません。 |
勤務時間 | 求人情報がありません。 |
勤務地 | 求人情報がありません。 |
休日 | 求人情報がありません。 |
福利厚生 | 求人情報がありません。 |
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