歯科業界のデジタル化が進むなか、多くの歯科技工所でミリングマシンが導入されています。今回はドイツの
アマンギルバッハ社製の乾湿両用5軸加工機Ceramill Motion2(セラミルモーション2)を紹介させていただきます!アマンギルバッハはとても高価な機種のため、日本国内で導入しているラボの数が少なく、その特徴や使い勝手などに関する情報が少ない機種です。
そこで今回、技工士ドットコム編集部は、アマンギルバッハ社製のCeramill Motion2を既に導入しているラボに取材をしてきました。この記事が、セラミルモーション2の導入を検討しているラボの皆様のお役に少しでも立てると幸いです。
それでは早速見ていきましょう!
〜この記事はこんな方におすすめ〜
- アマンギルバッハのことを知りたい!
- 今後、導入を考えている!
今回は、神奈川県横浜市に拠点を置く
ファイン・デンタルラボラトリーの、デジタル部門統括責任者を務める歯科技工士、岩崎直紀さんに協力していただきました。岩崎さんは国内でも珍しいアマンギルバッハ社製のCADシステムを導入し、実際に同機種を使いこなす数少ない歯科技工士の1人です!そんな岩崎さんにご協力いただき、アマンギルバッハのミリングマシン、セラミルモーション2の特徴や、使い勝手をご紹介していきたいと思います!
製品紹介
なんといってもアマンギルバッハのセラミルモーション2の最大の特徴は「対応できる症例や加工できる材料が幅広く、多機能で、削り出される歯科技工物の完成度は常に世界最高レベルであること」です。湿式/乾式両方の加工が可能となっており、材料の種類によって削り出す方法が変えられます。
加工制御技術と高い堅牢性を重視した装置コンセプトとなっており、導入後は、継続的なアップデートによってアプリケーションは長期間にわたって常に最新状態を維持することができ、頻繁に買い替えをする必要がないためラボの収益性向上に役立ちます。
※引用元:
https://asahi-xray.co.jp/product/ceramill-motion2-dna/
製品の特徴・価格
購入時の相場価格
アマンギルバッハ社のセラミルモーション2の現在の国内の販売価格(2021年1月時点)は、約840万円程となっており(取扱ディーラーや選択するオプションによって金額は異なります)、高機能で高性能な分、他社製品と比較してもずば抜けて高額ですが、もし価格を度外視するならば、歯科技工所が導入してみたいミリングマシーンの一台となるのではないでしょうか?
※販売価格は常に変化しているため、具体的な見積り価格などの詳しい情報は、販売メーカーにお問い合わせください。
特徴その1:バーの細さ・削り出し方
アマンギルバッハ社のミリングマシンの製品特徴の一つは、写真でご覧になって頂くと分かるように”バーが0.3mmと先端部分がとても細いこと”です(左:アマンギルバッハ社 右:他社のバー) 。そのため削り出された技工物のクオリティーは、従来製品のミリングマシンで削られたものとは格段に異なり、超精密な技工物の製作が可能です。
また、アマンギルバッハ社製のミリングマシンはブレが少ないので高回転(最大毎分100,000回転)のスピンドルに耐えられる事によって、削りのスピードがとても早いことが魅力の一つ、e.maxも問題なく削ることができます。
-岩崎さん
『削り出し方法も他社とは異なり、精密かつパワフルで特に咬合面の仕上がりが全く違います!他社のミリングマシンで時間をかけてデザインをしても、削り出した後を見比べると全然違います!比較してみて、改めてアマンギルバッハは本当に凄いと実感しますね!』
特徴その2:専用のCADCAMシステム
-岩崎さん
『アマンギルバッハには、専用のCADCAMシステムが搭載されています。一般的なCADCAMとそこまで大きな違いはないのですが、細かな違いがアマンギルバッハの魅力を大きく引き出しているのかなと思います!それとスキャンから加工までシームレスに工程を進めることが可能でデータ移行をする必要がなく、1つのPC・1つのシステムで完結していて使い勝手が良い。』
ーアマンギルバッハの魅力を最大限に引き出すコツはありますか?
-岩崎さん
『僕なら数値やデザインでしっかりこだわることですかね!保険や自費にかかわらずデザインにかける時間は約10分程ですが、トップクラスのミリングマシンだからこそ技工士も手を抜かず、手をかけてあげると更に凝った技工物が仕上がってきます!他社のミリングマシンでどれだけこだわってデザインや数値を出してもアマンギルバッハで削った精密な技工物と同じものは出来上がってきませんからね!』
特徴その3:安全性
アマンギルバッハは、安全性にとても優れており、万が一削り出している途中にフタが開いてしまっても、緊急停止するように作られています。他社製品は、削り出し途中にふたを開けても緊急停止はしないミリングマシンもある為、水や削った粉末などが吹き出してしまうこともあります。このように万が一にも備えてられており、安心して操作できるのもアマンギルバッハの魅力です。
特徴その4:技工物の完成度
アマンギルバッハのミリングマシンで製作された技工物は、他社と比較しても完成度はかなり高く、高精度の技工物が最速で出来あがります。
↓下記の写真は、セラミルモーション2で削り出された技工物の一部です。ぜひご覧ください。
削り出した後は、ほとんど手直しする必要のない超精密な技工物ができあがります。
ミリングマシンの使い勝手
その1:メンテナンスのしやすさ
アマンギルバッハは、細かい部分もしっかりと考えて作られています。中のパーツが簡単に取り外せて掃除がしやすく、機械の中がコンパクトに作られているので、隅々まで手が届きます。また、操作パネルなどはあえてつけておらず、削り出すことに特化されたミリングマシンのため、操作パネルの故障で機械が動かなくなる心配もありません。
-岩崎さん
『操作パネルが付いてるミリングマシンは、デザインをした後に、更にミリング機に取り付けられているパネルで操作をしないといけないため、少し手間がかかるし、パネルが故障しちゃうと稼働しなくなる心配があります。その一方でアマンギルバッハは、ミリングマシンは、削るだけなので手間もかからないというところで総合的なメンテナンスがしやすいですね!』
その2:座りながらの操作・取り出しが可能
一般的なミリングマシンは、置く台なども含めて高さがあり、機械を動かすには立ちながらの操作になります。それに比べてアマンギルバッハは、台も含めて低く設計されているため座りながらの操作が可能になっています。
-岩崎さん
『座りながらミリングマシンを扱えると点は、僕が1番感動したアマンギルバッハの魅力ですね!!最初は低く設計されているためとても操作がしずらいと思っていたのですが、使い慣れていくうちに座りながら操作ができることに気づきました。これはアマンギルバッハ社は言及していないことなので、僕の憶測なのですが、もともとアマンギルバッハ社は、人間工学に基づいて機械の設計をされています。きっと足の不自由な方でも安心して使えるように、あえて低く設計して作られているんだと思います。歯科技工士は、どんなバックグランドを持っている方でもなれる!という強いメッセージが込められているような気がしました。性能以前に素晴らしい心遣いをしてくれているんだな、と今でも使うたびに感動させられています!』
デメリット
その1:高額
-岩崎さん
『デメリットはただ一つだけです。”高額!”、これにつきます!購入しても返済しきれないので、なかなか手が出せません!本当に素晴らしいミリングマシンなので手が出せないのがネックではあります。』
その2:一部が英語表記のみ
-岩崎さん
『また、アマンギルバッハ専用のCadシステムの多くは日本語表記なのですが、海外メーカーのため一部が英語表記になってしまいます。英語表記に苦手意識がある方は、慣れるまでは操作が億劫に感じてしまうかもしれません。』
最後に。
最後までお読みいただきありがとうございます。歯科技工のデジタル化がどんどん進んでいく中、岩崎さんに今後の歯科技工はどのように変わっていくか伺いました。
-岩崎さん
『ミリングマシンを購入してよかったことや変わったことは、すでにいろんな歯科技工所から話を聞くかと思います。僕がはっきりと言えることは、もうデジタル機器を導入しないといけない時代になっている、ということです。全て手作業で技工物を作る時代ではなくなっています。最低でも、パソコンと口腔内スキャナーを導入するだけでも凄く効率化されると思いますし、削り出しはミリングマシンを導入しているラボに外注することも可能ですから。僕が思うに、デジタル機器を今後導入しないラボは衰退していくか、大手に吸収されていくのではないかなって思っています。今後、更にデジタル化が進むにつれて、僕自身もより良い技工物を提供できるように常に目を光らせていないといけないといけないと思っています!』
大変貴重で興味深い話を、ありがとうございました!