どんな時に、仕事にやりがいを感じますか? ― 建て前として言っているのではなく、本音で心から「患者さんのために」という行動や実行が伴ってるドクターと仕事をしているときですね。歯科技工士の仕事って、自分の仕事が完璧だと思ったら終わりだと思うんです。向上心がなくなって、納得したら、そこで終わり。だからこそ自分は、向上心の高いドクターと仕事をしたいんです。もしかすると一生、自分が究極的に納得する技工物はできないかもしれない。今でも納品後に、「あそこはもっとこうしておけばよかったかもな」とか常にどこかにそういう気持ちがあります。そういう意味では、歯科技工士の仕事って、100点満点が取れない仕事なのかもしれませんね。
責任や期待に応えたいという気持ちが大切
歯科技工士が年々減っていると言われていますが、若い人たちにメッセージを。 ― 正直に言うと、歯科技工士の仕事は、そんなに甘くないと思います。座っている時間が長いので体力と言う意味では大変じゃないけど、患者さん一人ひとりに対してオーダーメイドなものを、手作業で、丁寧に作っているから、とにかく時間がかかるんです。でも、フルオーダーメイドだからこそ、患者さんやドクターの期待や責任に応えたい、という気持ちが芽生えるんだと思うんです。 ― あとは、あくまで歯科技工士という仕事は、職人の世界なんですよね。だから本気さが必要です。良い仕事だけれども、それなりの気持ちや覚悟を持っていないと続かない。でも頑張ったら必ず、その先にある素晴らしい景色が見られる、そんな仕事ですかね。あとは、良い仕事を見ないと技術は上がらないので、就職や転職を考えている若い技工士たちには、自分の職場選びにはこだわって欲しいですね。
患者さんのために、最高の技工物を作り続ける
今後は、どんな技工所にしていきたいですか? ― おかげさまで今は多くのドクターの皆さんと仕事をさせて頂いていますが、今後は、若手の育成にも取り組んでいきたいです。まずは5人くらいの規模にできればいいかな、と思っています。質の高い技工物を確実にドクターに提供するには、自分の目が届く5人くらいの規模が最適だと思っているんです。
間中さんに興味を持ったドクターにメッセージを。 ― 自分の恩師である土屋さんから受け継いでいることの一つに、「患者さんの診療に立ち会うこと」があります。技工士は、ドクターや患者さんと密にコミュニケーションをとりながら仕事をすることがとても大切だと思うんです。私の場合、立ち会い時に自前の窯を持っていくことも少なくありません。その場でドクターや患者さんと話し合い、ステインの色を患者さんの希望に合わせて少しカスタマイズしてあげるんです。ちょっとした作業なのですが、患者さんはこのちょっとした気配りをとても喜んでくれます。もちろん患者さんの診療に立ち会うことは大変だけれども、「患者さんが喜んでくれる技工物を作って欲しい」という想いを持つドクターの期待に応えるには必要不可欠なことだと思っています。その結果、自分の作った技工物をセットしたときに、患者さんの表情がパッと明るくなったり、長年抱えていた歯の悩みがなくなって、患者さんから抱きつかれるくらい喜んで頂くこともあります。私の場合は医院で立ち会って、患者さんから直接、喜びの声をもらえることが明日の仕事への活力になっているのかもしれませんね。
編集後記/高崎 見た目は強面(こわもて)だが、良い恩師との出会いに恵まれたことに感謝の言葉を口にする謙虚な姿勢が印象的だった。ラボの片隅に置いてあったトロフィーに気づいて質問をしたら、黙々と技工物を作りながら、2016年にスペイン・マドリードで開催された世界大会でE-maxのチャンピオン(最優秀技工士)に選ばれたことを照れながら教えてくれた。仕事に向き合う情熱と覚悟から、一流の匂いを感じた。