噛み合わせの「超プロ」が語る!咬合理論を学ぶ大きなメリットとは?

昨今の歯科業界のデジタル化は、あくまで歯科治療や歯科技工物の製作プロセスを効率化する一つの手段に過ぎず、その手段を使いこなすためには、歯科治療に関する基本的な理解や理論的な知識は必要不可欠です。   特に、もし咬合に関する理論を理解していなければ、歯に過度な負荷がかかってしまい摩耗や歯の根元に欠損が生じるだけでなく、場合によっては歯そのものが折れてしまうこともあり得ます。また、噛み合わせと顎や首周りの筋肉は密接な関係にあるため、長期間にわたって大きな負荷がかかると、口が開きづらくなったり、顎の関節が痛くなったり、肩こりや首の痛み、偏頭痛やめまいなどの悪影響がでることもあります。   本記事では、日本顎咬合学会の常任理事を務める榊原功二氏に、咬合の基本についてお話を伺いました。  

〜この記事はこんな方におすすめ〜

  • 科学的根拠に基づいた咬合理論を学びたい
  • 咬合について興味はあるけど難しそう
  • 噛み合わせで悩まれている患者さんがいる
  • 咬合調整・セット時間を短縮したい

榊原功二氏

榊原さんは、日本顎咬合学会の常任理事として長年ご活躍され、同学会の歯科技工士部会で部長を務めています。また、白水貿易のセミナーインストラクターをも務め多方面で活躍されている咬合の第一人者の一人です。   さらには、シークエンシャル・オクルージョンの開祖であるウィーン大学教授のルドルフ・スラビチェック博士に師事し、同大学認定歯科技工士資格を取得されました。現在、国内で同資格を保有しているのは、榊原氏ただ一人です。そこで今回は榊原氏に「咬合の基本」の大切さについてコメントを頂きました。 左:スラビチェック分析の一部 右:Prof.Dr.Slavicekと榊原さん

治療の効率を最大限にあげる咬合の知識

−咬合理論を学ぶことによって、どのようないいことがあるのでしょうか? −榊原さん 咬合の基礎を理解することの最大のメリットは、数値化されたデータから患者様の状態を客観的に把握し、歯科医師や歯科技工士が『同じデータ、同じ数字、同じ単語』で歯科治療を語れるようになることです。さらには、もし難しい治療のケースの場合、通常であれば補綴物セット時の調整時間に20~30分もかかってしまうケースでも、咬合の基礎を理解することで、その調整時間が大幅に短縮でき、治療効率が飛躍的に向上し、最終的により多くの患者様の治療を行うことができるようになります。 しかし、大学の歯学部では実践的な咬合理論や症例に触れる機会が少ないため、噛み合わせに関して十分に理解されておらず、臨床現場で四苦八苦する歯科医師の方が少なからずいらっしゃることを目の当たりにしてきました。私はこれまで大学病院と密接に連携し、噛み合わせを改善するサポートを行うことによって数多くの患者様の口腔内の不調が改善されるケースに携わってきました。 左:歯ぎしりを観察する赤いシートを夜間装着した結果、白く抜けている部分が歯ぎしりにより赤色が剥がれてしまっている。 右:強い歯ぎしりによる不調和な噛み合わせで前歯が咬耗したと考えるられるケース。(左とは別のケース)

咬合の乱れによって起こりうる疾患

−噛み合わせを正しくすることによって、顎口腔系の違和感や不調和を治すことができるんですね! −榊原さん そうなんです。歯の噛み合わせ・顎・首周りの筋肉には密接な関わりがあるため長期的な負荷がかかると、口が開きづらい、顎関節が痛む、肩こりや首の痛み、偏頭痛、めまいなど、様々な形で弊害が現れてきてしまいます。 噛み合わせが乱れていると口腔内だけでなく全身の不調に繋がってきてしまうんです。 左:実際の患者様の初診時 右:歯の位置を正しくする為に矯正を行ったケース。(歯科矯正の為の機能咬合セットアップモデル)

咬合理論の基本の大切さ

−咬合理論をしっかり学ぶことによって、普段の診療の質が格段に上がるんですね。 −榊原さん 一度、咬合の基本知識を身に着けてしまえば、治療計画を適切に設計することができるようになります。結果として、歯科治療において咬合調整が少なくて済み、補綴物のセット時間を短縮することが可能になり、より多くの患者さんを診てあげる事ができるようになるのです。   残念ながら咬合理論は、とても複雑で習得することは簡単ではありません。しかし、咬合の基本を身につけることによって、最終的には患者さんの満足度をあげる診療に繋げる事ができると思います。僕は歯科技工士として歯科医師の指示のもと実際に歯を作っていますが、もし歯科医師の皆様が歯科技工士の目線で咬合の設計方法などを知れば、より歯科治療としての咬合理論の理解度が深まると思います。 左・中:噛み合わせ、審美など考慮したシークエンシャル・ガイダンス・オクルージョン・ワックスアップ 右:試適後の最終補綴装置   −ありがとうございました。
2022年度セミナーに関するお問い合わせ・申し込み
最後までお読みいただきありがとうございました。榊原さんの2022年度のセミナーは、2月からとなっております。セミナーに関するご相談は、下記のお問い合わせフォームからお問い合わせください!患者様の噛み合わせでお悩みの歯科医師の方や、科学的理論に基づいた咬合を学んで、技術を磨きたい方は、是非参加されてみてはいかがでしょうか?

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