
全国には 66,843軒(2024年厚労省統計データ)の歯科医院があり、「コンビニよりも多い」と聞くと、全国津々浦々まで歯科医院があるイメージを持たれるのではないでしょうか。 実際、東京都内で駅の周辺を少し歩けば、すぐに2、3軒の歯科医院を見付けることができるほど、身近に歯科医院があります。
しかし、厚生労働省が公表している「無歯科医地区等調査」のデータを見ると、まったく違った状況が浮かび上がります。
歯科医療機関のない地域がない都道府県は、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、そして大阪府のわずかに5都府県のみです。 残りの42道府県には、歯科医療機関のない地域、いわゆる「無歯科医地区」が存在しています。
< 都道府県別 無歯科医地区等数 >

全国には 1,249もの無歯科医・準無歯科医地区があり、全国の市町村数の22%にあたる 388の市町村がこれに該当します。
これらの地区に住む 244,618人は、日常的に歯科医師にかかることが非常に困難な状況に置かれています。 さらに、65歳以上の住民が52%と、地区住民の半数以上を占めています。 本来であれば定期的に歯科医院に通うことが強く推奨される年齢層が、日常的に歯科医療にアクセスできない「入れ歯難民」としてここに存在しています。
< 年齢階級別 無歯科医/準地区無歯科医人口(単位:人) >

無歯科医・準無歯科医地区に陥る理由としては、歯科医院が地域からなくなってしまったことに加え、交通の便が悪くなったことも挙げられます。 また、集計対象の地区は住民が50人以上と定義されており、実際には無歯科医・準無歯科医地区にもかかわらず、 49人未満の地区は集計対象外となっているため、実態としてはデータ以上に「入れ歯難民」の数が多いと考えられます。
高齢化社会、人口減少、過疎化と多くの要因が複雑に絡み合った「入れ歯難民」問題に、一朝一夕で効果の表れる施策は難しいかもしれません。 しかし、現代のIT技術をより活用した「遠隔診療」や「入れ歯の製作依頼」、全国に張り巡らされた物流網を活用することで、改善の道は十分に開けていると思います。