13章 歯科医院の経営に税理士・社労士・コンサルタントは本当に必要?

はじめに

歯科医院の経営では、日々の診療業務に加え、会計や人事管理、経営戦略といったさまざまな課題を抱えています。その中で、税理士や社労士、コンサルタントといった専門家への依頼を検討する場面が出てくるでしょう。

これらの専門家は、経営を効率化し、課題をスムーズに解決してくれる一方で、契約には一定の費用が発生します。そのため、「本当に必要なのか?」と悩む院長も多いのではないでしょうか。

本記事では、各専門家の役割や契約の是非について詳しく解説し、最適な選択をするための判断材料をご紹介します。

歯科医院の経営に税理士は必要?

結論:税理士との契約は、ほとんどの歯科医院にとって必要。

歯科医院の経費は「定形的なもの」が多いため、会計処理自体は比較的シンプルです。そのため、会計ソフト(例:freee、マネーフォワード)を活用すれば自分で処理することも可能です。

しかし、開業当初は特に診療に集中すべき時期であり、税務業務に時間を割く余裕は少ないのが現実です。税務処理を税理士に任せることで、本業に専念でき、結果的に経営全体の効率が向上します。

税理士が担う役割

税理士は、主に以下の業務を担当します。
記帳代行
日々の収支データの整理と記帳
税務申告
法人税や所得税、消費税の申告書作成
税務相談
節税対策や税務調査対応

相場と注意点

相場
月額2万円、決算時10万円、年間34万円程度。
高額な税理士事務所に注意
歯科ディーラー経由で紹介される税理士は、キックバックの発生により、月額5万円、年間70万円に達することもあります。これでは長期的にコスト高が続くため、慎重に比較検討することが大切です。

歯科医院の経営に社労士は必要?

結論:1軒目の小規模な歯科医院では契約する必要はない場合が多い。

給与計算や雇用契約書の作成など、社労士が担う業務はクラウドサービスやインターネットを活用すれば自力で対応可能です。特に小規模な医院ではコストをかけずに進められることが多いため、無理に契約する必要はありません。

ただし、従業員数が増え手続きが複雑になる場合や、就業規則の作成時には社労士のサポートが役立つこともあります。必要に応じてスポットで依頼するのが賢明な選択です。

社労士が担う役割

社労士は主に労務管理を担当します。以下のような業務を依頼できます。
給与計算
月々の給与額や社会保険料の計算
入退社手続き
雇用契約書や退職合意書の作成
助成金申請
ハローワークや行政機関への申請代行

自分で対応できる場合

社労士を契約しなくても、自力で以下の業務を行うことが可能です。
給与計算のクラウド化
勤怠管理をクラウドサービスで一元化すると、給与計算も自動化され、効率的です。 (例:King of Time、ジョブカンなど)
雇用契約書・退職合意書の作成
雛形をインターネットで取得し、自院用にカスタマイズするだけで対応可能です。
社会保険の加入手続き
近年はオンライン化が進み、手続きもスムーズに行えるようになりました。

契約を検討するケース

従業員数が増え、手続きやトラブルが複雑化する場合、社労士に相談するメリットが大きくなります。また、就業規則の作成など、初めて取り組む分野については専門家に依頼するのも一つの手です。

歯科医院の経営にコンサルタントは必要?

結論:初めての開業時にはメリットがあるが、慎重に選ぶべき。

コンサルタントは経営戦略や集患、コスト削減など幅広い支援を提供し、特に初めての開業では不安を軽減し、安定した経営を実現する助けになります。

ただし、コンサルタントには実績や専門性に差があるため、信頼できる相手を選ぶことが重要です。他業者と癒着のないコンサルタントを選べば、大幅なコスト削減も期待できます。コンサルタントの適切な選定が歯科医院経営の成功への大きな近道となります。

コンサルタントの役割

歯科医院の経営コンサルタントは、以下のような業務を提供します。
経営戦略立案
競争優位を築くための計画作成
集患対策
患者を増やすためのマーケティング
コスト削減
経費を抑えるための具体的なアドバイス

コンサルタントにお願いするメリット

経営の安定化
初めての開業では、多くの不安がつきものです。歯科医院経営に特化したプロのコンサルタントが経営をサポートすることで、早期に安定した経営基盤を築けます。
コスト削減の実現
他業者との癒着のないコンサルタントであれば、材料費や内装業者費用の見直しなどにより、大幅なコスト削減が期待できます。

注意点とリスク

コンサルタントを選ぶ際には、以下の点に注意が必要です。コンサルタントには国家資格がなく、誰でも名乗ることができるため、専門知識や実績の乏しい人も少なくありません。

信頼できるコンサルタントを選ぶことが、今後の医院経営を改善し、成功へと導く重要なポイントです。

コンサルタントの主なタイプ

税理士や社労士を兼ねた専門家型
経営全般をサポートしますが、他業者との癒着がある場合もあるため、注意が必要です。
営業職経験者型
人と話すのが得意ですが、経営に関する深い知識が欠けていることがあります。
Webマーケティング特化型
集患に特化していますが、医院全体の運営改善には不向きな場合も。
歯科事務長経験者型
歯科業界の知識に基づいた具体的なアドバイスが可能で、実務経験を活かした支援が得られます。
プロフェッショナル型(最もおすすめ)
経営戦略やコスト削減、人材管理まで幅広く対応できる専門家で、歯科医院経営を数字に基づき的確にサポートします。

選定のポイント

信頼できるコンサルタントを選ぶには、実績や得意分野をしっかり確認し、医院の課題に合ったサポートを提供できるかを見極めることが重要です。特に初めての開業では、プロフェッショナル型や事務長経験者型がおすすめです。

専門家を選ぶ際の注意点

専門家を選ぶ際は、医院経営の課題に的確に対応できる相手を見極めることが重要です。以下のポイントを押さえることで、信頼できるパートナーを選べる可能性が高まります。

実績を確認

専門家の実績は信頼性を判断する上で最も重要です。特に歯科医院での成功事例があるかどうかを確認しましょう。 具体的な成果やサポート内容について質問し、あなたの医院に必要なスキルや経験を持っているかを確かめることが大切です。

費用対効果を検討

契約には一定の費用が発生しますが、それが経営改善や業務効率化に見合うかを慎重に判断しましょう。 例えば、税理士やコンサルタントの場合、短期的な支出以上に、経営改善やコスト削減による長期的な利益を期待できるかがポイントです。

透明性を重視

紹介料やキックバックなどが絡む契約は、不要なコストを生む可能性があります。特に歯科ディーラーなどの仲介を経た場合、契約相手に癒着があるかもしれません。

契約前に料金の内訳を確認し、トータルコストを比較検討することをおすすめします。

まずは「話を聞く」ことから

専門家を選ぶ際は、実際に複数の候補者と話をしてみることが大切です。対応の丁寧さや提案内容、医院に合った解決策を提示してくれるかどうかを確認しましょう。

特に初めて依頼する場合、相性や信頼感も重要な選定基準になります。

まとめ

歯科医院の経営では、税理士や社労士、コンサルタントといった専門家の選択が、医院の規模や状況によって重要になります。まずは候補となる専門家と直接話をして、医院の課題やニーズに合ったサポートが受けられるかを見極めましょう。

その上で、契約の必要性を慎重に判断することで、無駄なコストを抑えながら効率的な経営を実現し、医院の成長につなげることができます。

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